鶉衣(読み)ウズラゴロモ

デジタル大辞泉 「鶉衣」の意味・読み・例文・類語

うずら‐ごろも〔うづら‐〕【×鶉衣】

ウズラの羽がまだらであるところから》継ぎはぎのしてある着物。ぼろな着物。うずらぎぬ。うずらのころも。
錦繍きんしゅのかさね引きかへ、いつの間に―とほころびて」〈浄・五枚羽子板〉
[補説]書名別項。→鶉衣

じゅん‐い【×鶉衣】

子夏は貧しく、着ている衣服が破れていたのを鶉にたとえた「荀子大略の故事から》継ぎはぎだらけの衣。みすぼらしい衣服。弊衣。うずらごろも。

うずらごろも【鶉衣】[書名]

江戸後期の俳文集。4編12冊。横井也有著。前編は天明7年(1787)刊、後編は翌天明8年(1788)刊。続・拾遺編は文政6年(1823)刊。也有の俳文をほとんど全部網羅しており、その軽妙自在な文体は古来俳文の一典型とされる。

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精選版 日本国語大辞典 「鶉衣」の意味・読み・例文・類語

うずら‐ごろも うづら‥【鶉衣】

[1] 〘名〙 つぎはぎの着物。また、破れすり切れて短くなった着物。弊衣。うずらぎぬ。うずらのころも。《季・秋》
※至宝抄(1585)「うづら衣とは短衣なり」
※浄瑠璃・雪女五枚羽子板(1708)下「いつのまにうづらごろもと綻びて」
[2] 江戸後期の俳文集。四編一二冊。横井也有著。著者が残した俳文をほとんどすべて編集したもので、前編に天明五年(一七八五)の跋(ばつ)、続編に文政六年(一八二三)の序があるが、前編は天明七年、後編は同八年刊。和漢の故事、ことわざをはじめ、自然人事など広い主題について、技巧を凝らした軽妙な文章で書かれている。

じゅん‐い【鶉衣】

〘名〙 (子夏が貧乏で破れ衣を着ていたのを「県鶉」とたとえた「荀子‐大略」の文から) つぎはぎの着物。弊衣。うずらごろも。
懐風藻(751)初春於左僕射長王宅讌〈百済和麻呂〉「鶉衣追野坐。鶴蓋入山家」 〔杜甫‐風疾舟中伏枕書懐奉呈湖南親友詩〕

うずら‐ぎぬ うづら‥【鶉衣】

挙白集(1649)冬「鳴きたえぬ秋くれしより深草やうづらぎぬ打つ音ばかりして」

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普及版 字通 「鶉衣」の読み・字形・画数・意味

【鶉衣】じゆんい

つぎはぎの衣。〔子、大略〕子夏し。衣、縣鶉(けんじゆん)の(ごと)し。人曰く、子、何ぞ仕へざると。曰く、侯の我に驕るには、吾(われ)臣と爲らず。大夫の我に驕るには、吾復た見ず。

字通「鶉」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鶉衣」の意味・わかりやすい解説

鶉衣
うずらごろも

俳文集。横井也有(やゆう)の若年より晩年に至る俳文を収載したもの。前、後、続、拾遺の4編12冊(各編3冊)。前編1787年(天明7)、後編1788年(天明8)、続・拾遺編1823年(文政6)刊。也有没後、大田南畝(なんぽ)(蜀山人(しょくさんじん))がその文章のおもしろさに感動し、也有の俳友堀田六林(ろくりん)から稿本『鶉衣』を得て出版、それを機縁に以後続刊された。日用の俗を題材にしながら、風雅の意識により虚構の世界を再構成するという手法によってつづられるその文章は、機知と技巧を基調とする軽妙自在な味をもち、古来、もっとも洗練、完成された俳文として賞されている。もっとも、その風雅は芭蕉(ばしょう)の風雅とは趣を異にし、洒脱(しゃだつ)であか抜けした滑稽(こっけい)味という点に主眼がある。

中野三敏

『岩田九郎著『完本うづら衣新講』(1958・大修館書店)』『野田千平著『稿本系うづら衣本文と研 究』(1980・笠間書院)』

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改訂新版 世界大百科事典 「鶉衣」の意味・わかりやすい解説

鶉衣 (うずらごろも)

俳文集。横井也有(やゆう)著。四方山人序。〈前編〉(1787),〈後編〉(1788),〈続編〉〈拾遺〉(1823)各3冊ずつ12分冊として刊行されたが,後には,4冊または2冊に合冊された。作者みずから編集した稿本をもとにして刊行されたもの。題名は,ウズラの羽毛に似てつづれのような文章だとの意で,卑下して名づけたもの。約220編の俳文を収めている。軽妙洒脱な,技巧を極めた文章で,俳文の一つの典型と考えられている。芭蕉の風雅な俳文とはまた別種のものである。
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百科事典マイペディア 「鶉衣」の意味・わかりやすい解説

鶉衣【うずらごろも】

俳文集。4編12巻12冊。也有著。1787年―1823年刊。横井也有没後,大田南畝,紀六林,石井垂穂により刊行。自然,人事を深い古典的教養と俳諧(はいかい)的通俗性をもって描く。簡潔,柔軟な雅俗折衷体で,才気に富んだ軽妙な筆致である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鶉衣」の意味・わかりやすい解説

鶉衣
うずらごろも

江戸時代後期の俳文集。横井也有 (やゆう) 著。半紙本 12冊 (前編,後編,続編,拾遺) 。天明7 (1787) ~文政6 (1823) 年刊。四方山人,也有,六林,南畝,垂穂,六樹園の序跋がある。也有の俳文および俳体詩あわせて 240編余を収録。古来,俳文の極致を示すものとして推称されている。和漢の故事を駆使し,雅俗をとりまぜ,軽妙自在である一面,文字の遊戯という欠点がないでもない。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「鶉衣」の解説

鶉衣
うずらごろも

俳文集。4編。也有(やゆう)著。220余章を収録。稿本は「鶉衣」「続鶉衣」「後鶉衣」「鏡裏梅」の4編。版本の4編のうち前編・後編が稿本からの抄録で,それぞれ1787年(天明7)と翌年の刊。続編・拾遺は石井垂穂編「半掃庵也有翁筆記」を底本にして編まれたもので,1823年(文政6)序。「日本古典文学大系」「古典俳文学大系」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「鶉衣」の解説

鶉衣
うずらごろも

江戸後期,横井也有の俳文集
1787〜1823年刊。4編12冊246項。軽妙洒脱な知性と平静な心で,日常生活・自然・和漢の故事・俗諺・詩心・紀行などを述べている。江戸時代の俳文中,屈指の作品。

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世界大百科事典(旧版)内の鶉衣の言及

【俳文】より

…蕉門の俳文集には,ほかに支考の《本朝文鑑》《和漢文藻》がある。その後,諧謔味にあふれ技巧的に俳文の極地を示した也有の《鶉衣(うずらごろも)》,離俗の姿勢を持つ蕪村の《新花摘(しんはなつみ)》があり,一茶の《父の終焉日記》《おらが春》,友水の《風狂文草》,自得の《芙蓉文集》,蟹守の《新編俳諧文集》,月化の《秋風庵文集》などがある。【井上 敏幸】。…

※「鶉衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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