夫人
ふじん
令(りょう)制の後宮における地位の一つ。「ぶにん」とも読む。皇親出身の妃(ひ)に次ぎ、嬪(ひん)の上に位置し、定員3名。三位(さんみ)以上を原則とし、大臣の女(むすめ)などが多い。聖武(しょうむ)天皇の夫人藤原光明子(こうみょうし)をはじめ、夫人から皇后にのぼった例も二、三ある。しかし平安初期から現れた女御(にょうご)の地位がしだいに向上するに及び、嵯峨(さが)天皇の夫人藤原緒夏(おなつ)を最後として廃絶した。また天皇の母にして夫人位にあるものを皇太夫人といい、とくに中宮職(ちゅうぐうしき)を付置されて后位に准ずる優遇を受けたが、これも醍醐(だいご)天皇の養母藤原温子(おんし)を最後として廃絶した。
[橋本義彦]
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ふ‐じん【夫人】
〘名〙 (「夫」は扶で、おっとを助けるの意)
① 昔、中国で、天子の妃。また、諸侯の妻。ぶにん。
※源氏(1001‐14頃)賢木「戚夫人の見けん目の様にあらずとも」 〔礼記‐曲礼下〕
② 令制で、後宮の女性の地位の一つ。皇后、妃につぎ、令の規定では三位以上の女性から選ばれ、三人置くことができた。〔令義解(718)〕
③ 貴人の妻。
※大和法隆寺文書‐天平宝字五年(761)法隆寺縁起并資財帳「正三位橘夫人宅奉二請坐一者」
④ 他人の妻を敬っていう語。
※江戸繁昌記(1832‐36)四「借とひ富豪に贖なはれ(〈注〉うけだされ)し、紅袖翠裾、象箸金碗、夫人尊姐(〈注〉ゴシンゾサンヤヲクサン)と呼るるも」
ぶ‐にん【夫人】
※勝鬘経義疏(611)序「則為二阿踰闍友称夫人一顕二三従之礼一」 〔色葉字類抄(1177‐81)〕
ハシカシ【夫人】
〘名〙 古代朝鮮語(百済語)で、夫人をさした語。
※
書紀(720)一四・雄略二年七月(図書寮本訓)「〈百済新撰に云ふ〉〈略〉百済慕尼夫人
(ハシカシ)の女の」
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デジタル大辞泉
「夫人」の意味・読み・例文・類語
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ぶにん【夫人】
天皇のキサキの称。後宮職員令によれば定員3名で,位階は三位以上とされていた。妃(ひ)の下位,嬪(ひん)の上位に位置づけられた。大臣クラスの有力者の家の子女が多く任命された。9世紀に入って女御・更衣制度が導入されると,これが置かれることは少なくなり,嵯峨朝を最後として史上から姿を消す。その封禄は女は男の半分という原則から外され,全給されることになっていた。後宮【玉井 力】
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世界大百科事典内の夫人の言及
【後宮】より
…天子は皇后のほか多数の妃嬪(ひひん)を抱えたが,すべて後宮に住んだので,皇后以下を後宮とよぶことがある。《礼記(らいき)》昏義に,古代には皇后が六宮を建て,3夫人,9嬪,27世婦,81御妻をひきいて内治をつかさどり,婦徳を明らかにしたとあり,後世の後宮制度の規範となった。後宮には后妃のほか,女官や宦官,賤民などが属して,宮中の職務や使役に従事した。…
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