憖(漢字)

普及版 字通 「憖(漢字)」の読み・字形・画数・意味


16画

[字音] ギン・キン
[字訓] なまじいに・かける

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(ぎん)。〔説文〕十上に「は犬、(はぐき)を張りて怒るなり」とし、憖字条十下に「問ふなり。ふなり」とし、「一に曰く、(よろこ)ぶなり。一に曰く、甘し」とみえる。〔段注〕に〔玉〕等によって「(肯)なり。ふなり。一に曰く、ぶなり。一に曰く、且なり」と改めている。〔玉〕には「に、なり。一に曰く、ぶなり。一に曰く、且なり」とみえるが、これらの訓義の間に統貫するものがない。〔左伝、哀十六年〕の孔子を弔う誄辞(るいじ)に「旻天(びんてん)不淑(ふしゆく)にして、憖(なまじ)ひに一老を(のこ)さず」とあり、その句は〔詩、小雅、十月之交〕にみえるもので、字の初義を示す例である。〔詩〕の〔〕に引く〔説文〕に「憖は肯なり」とみえる。また〔左伝、文十二年〕「兩軍の士、皆未だ憖(か)けざるなり」とは、なお傷害を被らぬ意である。字の構造よりいえば、來(来)は来麦、犬は犬牲、これらを供えて祀り祈ることをいう。〔小爾雅、広言二〕に「願ふなり」、〔広雅、釈詁一〕に「憂ふるなり」とあるのが字義に近く、〔詩〕の〔箋〕に「心に欲せず、自ら彊(つと)むるの辭なり」とは、国語の「なまじい」に近い意であろう。

[訓義]
1. なまじいに、つとめて、しいて。
2. ねがう。
3. うれえる、いたむ、つつしむ。
4. かける、きずつく。

[古辞書の訓]
名義抄〕憖 コハシ・ナマジヒ・トトノフ

[熟語]
憖遺憖暇憖憖憖置憖留

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報