悪霊
あくりょう
Besy
ロシアの作家 F.ドストエフスキーの長編小説。 1872年発表。 69年にモスクワの農業大学の学生イワーノフが革命秘密結社脱退を申出たことによって,ネチャーエフを首領とする同志に惨殺されたという「ネチャーエフ事件」が執筆の直接的動機となり,この事件とその人物たちをモデルとして書かれた。根底には,作者が以前から暖めていた「無神論」のテーマが横たわる。 40年代の理想主義的リベラリストのステパン氏,その教え子で悪魔的な知力と矛盾する思想をいだいた超人タイプのスタブローギン,ステパン氏の息子で5人組の首領ピョートル,裏切者として暗殺されるシャートフ,人神思想を説き,自殺することによってみずから神になろうとするキリーロフなどのみごとな芸術形象を創造したことによって,きわめて独創的な作品となっている。
悪霊
あくりょう
ものの怪 (け) ともいい,人間について,病気などの異常を起す神やものをいう。ときに人間のからだから抜け出た分離魂,すなわち生霊,死霊が悪霊となることがある。悪霊は神仏の威力により退散させうると考えられ,加持祈祷,呪文などが行われた。日本における悪霊信仰は平安時代に最も盛んで,『源氏物語』や『紫式部日記』にその記述がみられる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
あく‐りょう ‥リャウ【悪霊】
[1] 〘名〙 人にたたりをする
霊魂。
死者の霊についていうことが多いが、生者の魂、人間以外の霊的存在についてもいう。もののけ。
怨霊(おんりょう)。あくろう。あくれい。
※
源氏(1001‐14頃)
夕霧「あくりゃうは
執念(しふね)きやうなれど
業障(ごふしゃう)にまとはれたる、はかなものなり」
※義経記(室町中か)三「死するともあくりゃうとならん」
[2] (
原題Bjesy) 長編小説。ドストエフスキー作。一八七一~七二年に発表。いわゆる「ネチャーエフ事件」を
題材に、無神論的革命思想に憑かれた青年たちの
破滅を批判をこめて描いた。
あく‐ろう ‥ラウ【悪霊】
※青表紙一本源氏(1001‐14頃)夕霧「あくらうは、執念(しふね)きやうなれど」
あく‐れい【悪霊】
※日葡辞書(1603‐04)「Acurei(アクレイ)、または、アクリャウ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「悪霊」の意味・読み・例文・類語
あくりょう【悪霊】[書名]
《原題、〈ロシア〉Besï》ドストエフスキーの長編小説。1870~1872年に発表。無神論的革命思想に憑かれた人々の破滅を描く。
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世界大百科事典内の悪霊の言及
【サタン】より
…イスラムではシャイターンshayṭānという。悪魔・悪霊などと同一視され,その概念は必ずしも一定ではない。サタンは,旧約聖書では神に従属するものとされ,神対サタンという二元論は避けられている。…
※「悪霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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