ゆう‐ぎり ゆふ‥【夕霧】
※
万葉(8C後)一四・三五七〇「
蘆の葉に由布宜利
(ユフギリ)たちて鴨が音の寒き夕へし汝をは偲はむ」
[2]
[一] 「源氏物語」第三九帖の名。光源氏五〇歳の八月から冬まで。夕霧の
柏木未亡人落葉宮への
思慕と、二人の
行く先を悲嘆した落葉宮の
母御息所の死、夕霧夫人雲居雁の嫉妬立腹を描く。
[二] 「源氏物語」の登場人物。光源氏の長男。母は葵上。父の方針で大学に学び、まめ人として成長、幼なじみ雲居雁との恋を成就させる。のち、柏木の未亡人落葉宮とも結婚。右大臣、竹河の巻によれば
左大臣に至る。
[三]
江戸時代、
大坂新町扇屋四郎兵衛抱えの名妓。名は
照。藤屋伊左衛門との情話につくられて
浄瑠璃・
歌舞伎などに取り上げられた。延宝六年(
一六七八)没。
[四] (三)と伊左衛門の情話を扱った薗八節「ゆかりの
月見」、
富本節・
清元節「春夜障子梅」、常磐津節「其扇屋浮名恋風」、新内節「夕霧
廓文章」などの通称。
せき‐む【夕霧】
〘名〙 夕方の霧。ゆうぎり。
※懐風藻(751)七夕〈吉智首〉「菊風披二夕霧一、桂月照二蘭州一」
※平家(13C前)七「孤嶋に夕霧(セキム)〈高良本ルビ〉隔て、月海上にうかべり」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
夕霧
没年:延宝6.1.6(1678.2.26)
生年:明暦3(1657)
江戸前期の遊女。京都島原の扇屋四郎兵衛抱えで美人の名が高く,寛文12(1672)年抱え主が大坂新町へ移るのに同行した。大坂でも人気が高く,客をさばき切れないため,先乗りの女郎に座をもたせたが,これが引舟女郎の初例という。その死を惜しんで,2月3日には早くも追善の歌舞伎『夕霧名残の正月』が上演され,恋人役として阿波の大尽藤屋伊左衛門が登場。以後歌舞伎や浄瑠璃にこの恋物語が数多く脚色され,近松門左衛門の「三世相」(存疑),「夕霧阿波鳴渡」(1712年初演),近松半二らが,これを翻案した合作「傾城阿波の鳴門」や,その改作で今日も親しまれている外題「廓文章」などが知られる。享年は27歳ともいう。
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
デジタル大辞泉
「夕霧」の意味・読み・例文・類語
せき‐む【夕霧】
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夕霧 ゆうぎり
?-1678 江戸時代前期の遊女。
扇屋四郎兵衛抱えの太夫(たゆう)。京都島原から寛文12年(1672)大坂新町にうつる。延宝6年1月6日病没,享年は22歳とも27歳ともいう。本名は照。没後ただちに歌舞伎で「夕霧名残の正月」が上演される。浄瑠璃(じょうるり)にも脚色され,近松門左衛門の「夕霧阿波(あわ)の鳴渡(なると)」などが有名。劇中にでる夕霧の恋人藤屋伊左衛門は実在しない。
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夕霧
(通称)
ゆうぎり
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 元の外題
- 夕霧名残の正月 など
- 初演
- 延宝6.2(大坂・荒木与次兵衛座)
夕霧
(別題)
ゆうぎり
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 元の外題
- 翻詞廓文章
- 初演
- 文久3.9(江戸・中村座)
夕霧
ゆうぎり
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 初演
- 宝永5.10(京・亀屋座)
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
普及版 字通
「夕霧」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報