引繰返(読み)ひっくりかえす

精選版 日本国語大辞典 「引繰返」の意味・読み・例文・類語

ひっくり‐かえ・す ‥かへす【引繰返】

〘他サ五(四)〙
上下順序などを反対にする。
(イ) 上下・表裏を逆にする。うらがえす。くつがえす。
※雑兵物語(1683頃)上「刀をきっ刃にひっくりかへひてさす事がない当世は、鍋釣の様な刀はおかしい」
(ロ) 順序を逆にする。
※虎明本狂言・富士松(室町末‐近世初)「したうへへなさうとも、ひっくりかへさう共、身がままじゃ」
(ハ) 特に、帳面書物などのページをめくる。
※一兵卒の銃殺(1917)〈田山花袋〉一八「宿帳をひっくり返して見て」
② 立っているもの・正常の位置にあるものを、横あるいはあお向けに倒す。転倒させる。
※雑俳・末摘花(1776‐1801)四「門院をひっくりかへしたが落度
③ それまでの状態や関係を、逆または別のものにする。逆転させる。
※俳諧・七番日記‐文化一四年(1817)八月「朝寒を引くり返す木槿哉」
④ それまでの気持・考え・態度などを急に変える。
※俳諧・三千風笈さがし(1701)序「此念をそのままひっくりかへし順道にゆかば」

ひっくり‐かえ・る ‥かへる【引繰返】

〘自ラ五(四)〙 (「ひっくりがえる」とも)
① 上下・順序などが反対になる。
(イ) 上下・表裏が逆になる。
※絅斎先生敬斎箴講義(17C末‐18C初)「此僅な端に踏違が出来ると、頓と天地はひっくりかえるぞ」
(ロ) 順序が逆になる。
② 立っているもの・正常の位置にあるものが、横あるいはあお向けに倒れる。転倒する。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)前「ひっくりかへってわらふ」
③ それまでの状態や関係が、逆または別のものになる。逆転する。
※京大二十冊本毛詩抄(1535頃)一五「九嬪が又一夜の番して十二日十三日の三夫人が一番十四日ぞ本夫人が一夕ぞ十五日ぞ又ひっくり帰て十六日の番も本夫人で」
※二百十日(1906)〈夏目漱石〉五「わるい事が、ひっくり返(カヘ)って、いい事になると思ってる」
④ それまでの気持・考え・態度などが急に変わる。
人情本・恩愛二葉草(1834)二「其の心根が、顛倒迷乱(ヒックリカヘリ)

ひっくら‐かえ・す ‥かへす【引繰返】

〘他サ五(四)〙 =ひっくりかえす(引繰返)
落語・江戸見物(1898)〈六代目桂文治〉「突き当って塩物屋の店を転覆(ヒックラカヘ)した」

ひっくり‐かえし ‥かへし【引繰返】

〘名〙 ひっくりかえすこと。さかさまになること。また、その状態。
※颶風新話(航海夜話)(1857)初「カノ丸木舟の類)が水龍巻でひっくりかへしになって」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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