尤・最(読み)もっとも

精選版 日本国語大辞典 「尤・最」の意味・読み・例文・類語

もっとも【尤・最】

(「もとも」の変化したもの)
[1] 〘副〙
① その事柄について疑問がなく、同感・肯定できるさま。本当に。いかにも。なるほど。
※百座法談(1110)三月二七日「此経を〈略〉廻向しさせ給こそ尤も可然事とおぼえ候へ」
曾我物語(南北朝頃)一「もっともしかるべしとて、一門五十余人、いでたちたり」
② 程度のはなはだしいさま。
(イ) 非常に。とりわけ。たいそう。他をこえて。他のすべてにまさって。
※東大寺本大般涅槃経平安後期点(1050頃)五「譬へば虚空の最(モットモ)高くして比び无きがごとく」
(ロ) (否定文の場合) 少しも。全然。決して。
※竹取(9C末‐10C初)「をかしき事にもあるかな。もっともえしらざりけり。興あること申たり」
[2] 〘名〙 (形動) その事柄がなんら疑問の余地のないこと。当然そうあるべきであること。あたりまえ。当然。
平家(13C前)一「数千人の大衆先陣より後陣まで、皆尤々とぞ同じける」
※保元(1220頃か)上「今夜の発向尤也」
[3] 〘接続〙 前の事柄を受けながらも、それに対立的・反対的な条件や補足をつけ加えることを示す。そうはいうものの。一方で。ただし。
浮世草子・好色一代女(1686)五「是程まで身をこらし浅ましき勤め、尤(モットモ)給銀は三百目五百目八百目までも段々取しが」
[語誌](1)院政期頃より慣用的に(一)①の挙例に見られる「しかるべし」を修飾する用法が増加して、「もっとも」一語で「もっともしかるべし」の意味を表わすようになる。中世後期には、(二)の挙例「保元物語」に見られるようなこの意味での「もっとも」を語幹とする形容動詞「もっともなり」が成立する。
(2)(一)の副詞としての用法も、「いかにも…であるが」の意で後ろに逆接で続く文、フレーズに含まれるものが目立つようになり、近世になると(三)の逆接の接続詞としての例が見られるようになる。

もとも【尤・最】

[1] 〘名〙 (形動) =もっとも(尤)(二)
蜻蛉(974頃)下「御らんぜんにもともなりけりなどいへど」
[2] 〘副〙
① =もっとも(尤)(一)①
※栄花(1028‐92頃)玉の村菊「げにあはれに悲しき事なり。されど世間を見思には、もともこれあべき事なり」
② =もっとも(尤)(一)②(イ)
万葉(8C後)一一・二七八一「海(わた)の底沖を深めて生ふる藻の最(もとも)今こそ恋はすべなき」
③ もともと。本来
和泉式部日記(11C前)「もとも心ふかからぬ人にて、慣らはぬつれづれのわりなくおぼゆるに、はかなきことも目とどまりて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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