副詞(読み)ふくし

精選版 日本国語大辞典 「副詞」の意味・読み・例文・類語

ふく‐し【副詞】

〘名〙 品詞の一つ。主として連用修飾語として用いられる語。一般に、事物の性質・状態について修飾するもの(状態の副詞=文語では、「うらうらと」「はるばる」「かたみに」「うたた」、口語では、「うとうと」「たびたび」「かねて」「そう」など)、ある性質・状態を表わす語に対して、その程度を示すもの(程度の副詞=文語では、「いささか」「いと」「いよよ」、口語では、「少し」「たいへん」「もっと」など)、用言叙述仕方を修飾し、これを受ける語に一定制約を要求するもの(陳述の副詞=文語では、「ゆめ」「つゆ」「いづくんぞ」「すべからく」、口語では、「決して」「なぜ」「おそらく」「万一」など)の三種に分類される。程度の副詞は、場所、方向、時間、数量などを表わす体言や、状態の副詞を修飾することがある(「ずっと右」「もっと東」「少しゆっくり歩け」)。また、いわゆる接続詞感動詞を副詞に含める学説もある。〔百学連環(1870‐71頃)〕

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デジタル大辞泉 「副詞」の意味・読み・例文・類語

ふく‐し【副詞】

品詞の一。自立語活用がなく、主語にならない語のうちで、主として、それだけで下に来る用言を修飾するもの。事物の状態を表す状態副詞(「はるばる」「しばらく」「ゆっくり」など)、性質・状態の程度を表す程度副詞(「いささか」「いと」「たいそう」など)、叙述のしかたを修飾し、受ける語に一定の言い方を要求する陳述副詞(「あたかも」「決して」「もし」など)の3種に分類される。なお、程度副詞は、「もっと東」「すこしゆっくり」のように体言や他の副詞を修飾することもある。
[類語]品詞体言用言名詞代名詞動詞形容詞形容動詞連体詞接続詞感動詞助詞助動詞

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「副詞」の意味・わかりやすい解説

副詞
ふくし

品詞の一つであるが、他の品詞との境界が不鮮明である。言語により状況が異なるので、以下日本語についてのみ述べる。

[国広哲弥]

機能

動詞修飾「ゆっくり歩く」。形容詞修飾「とても美しい」。副詞修飾「なるべく早く」。文修飾「たしかにあの人です」。名詞修飾「すぐ上、もっと右、たった一つ、ずっと以前」。「の」を介して名詞につく「まさかの時、あいにくの雨、突然のお願い」。「だ・か」などの前で述語となる「あいにくだね、まだか」。次に「結果の副詞」という現象がある。「黒く染める、ぼろぼろに裂く」。「穴が大きくあく」は「結果の形容詞」と関連している。「大きな穴があく」。

[国広哲弥]

意味的分類

伝統的には3分法が行われているが、これに入りきらない語もある。(1)情態副詞「わざわざ、ゆっくり、こんがり」。擬声語・擬態語。(2)程度副詞「もっと、やや、随分、大変、すごく」。(3)陳述副詞「けっして、おそらく」。これは叙述副詞、呼応副詞ともよばれる。伝統的にはここに入れられているが、「どうぞ、ぜひ、なぜ、もし、まるで」などは異質である。

[国広哲弥]

語形的分類

単一語「ゆっくり、かつて」。畳語形「ひとりひとり、泣く泣く、道々」、多く擬声語擬態語。名詞形「きょう、先月、春、連日」。数量詞三つ買う」。「―に」「非常に、にわかに」。「―と」「ぴたりと」。語によっては「に・と」両方がつく「自然に・と、段々に・と」。形容詞・動詞連用形「よく、早く」「急ぎ帰国する」。動詞連用形+「て」「あわてて、いそいで」。句からの転化「思う存分、ことによると、九分通り」。

[国広哲弥]

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百科事典マイペディア 「副詞」の意味・わかりやすい解説

副詞【ふくし】

品詞の一種。日本語では,独立して一文節をなす語で,活用がなく,主として用言または述語を修飾する。〈はっきり〉など事物の情態を表し動詞を修飾する情態副詞,〈ちょっと〉など事物の性質・情態の程度を表し形容詞・形容動詞を修飾する程度副詞,〈決して〉など述語の陳述にかかる陳述副詞に3分される。
→関連項目日本語

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「副詞」の意味・わかりやすい解説

副詞
ふくし
adverb

品詞の一つ。おもに動詞,形容詞,副詞を修飾して,それらの意味に様態や程度などのうえでの制限を加える働きをもつ。英語の He can run very fast.で veryは fastを修飾し,fastは (very fastという句で) runを修飾する副詞。国文法では一般に意味のうえから,「はっきり」「わざと」のように様子を表わす情態副詞,「ますます」「やや」のように程度を表わす程度副詞,「もしも」「全然」のように特定の語法を支配し陳述にかかわる陳述副詞に3分されることが多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「副詞」の意味・わかりやすい解説

副詞 (ふくし)

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世界大百科事典(旧版)内の副詞の言及

【修飾語】より

…しかし〈ある(人)〉〈この(本)〉などの修飾語は被修飾語の体言を外面的に特定化するのみであって,ここに用いられる連体詞なるものは連体修飾語たることを唯一の機能とする品詞である。 一方,連用修飾語たることを本来の機能とする品詞は副詞であるが,そのうち〈ゆっくり(歩く)〉などの状態副詞は,連用修飾語として用いられた形容詞・形容動詞(各副詞形),動詞(+助動詞・助詞)などと同様に,自らある性質・状態を表して,被修飾語である動詞の動作の様態を説明する。これに対し〈はなはだ(美しい)〉〈もっと(ゆっくり)〉などの程度副詞は,被修飾語の表す性質・状態の程度を示す。…

【助辞】より

…これに対して〈虚詞〉は単独ではそのような具体的なイメージをもたらさない。その表す意味は〈空霊〉で,実詞のはたらきを助けて話者の意志または情念を伝達するものであり,副詞や連詞や介詞や語気助詞(単に〈助詞〉と呼ぶ人がある)などがこれに属する。日本の漢学者のいう〈助字〉の範囲はいっそう広く,代名詞などをも含めることがある(中国の学者にも同様の説をなす人があった)。…

【品詞】より

…日本語でよくいわれる助動詞(〈タ〉とか〈レル,ラレル〉)は,確かにある範疇を形成しているようであるが,その内部にいくつかの下位範疇が(しかも,数少ない単語を分け合う形で)存在していると思われる。
[副詞]
 動詞を中心とした述語のあらわす運動・動作などの様態や,起こった(起こる)時刻,場所などをはっきり表す単語が一つの範疇を形成する場合,〈副詞〉という名称が与えられることが多い。ただし,そうした事象の表し方は言語によってかなり変異しうる。…

※「副詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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