小町踊(読み)コマチオドリ

デジタル大辞泉 「小町踊」の意味・読み・例文・類語

こまち‐おどり〔‐をどり〕【小町踊(り)】

江戸前期、京都などで、7月7日の昼、美しく着飾った少女たちが小太鼓をたたき、歌をうたいながら輪になって町々を踊り歩いたもの。七夕踊り。 秋》「歌いづれ―や伊勢踊貞徳

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精選版 日本国語大辞典 「小町踊」の意味・読み・例文・類語

こまち‐おどり ‥をどり【小町踊】

〘名〙 江戸初・中期に流行した風流(ふりゅう)踊り。七月七日・一五日に、京都、大坂などで、はなやかな衣装鉢巻、たすき姿の娘たちが列をなして町を踊り歩いたもの。七夕踊り。《季・秋》
※俳諧・犬子集(1633)五「百とせの姥等も小町おどり哉〈貞徳〉」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小町踊」の意味・わかりやすい解説

小町踊
こまちおどり

江戸時代の初・中期ごろ、京都で七夕(たなばた)の日に踊られた娘たちの風流踊(ふりゅうおどり)。七夕踊ともいった。娘たちの年齢は、年代によって一定していないが、7、8歳から17、18歳までの間で、はでな扮装(ふんそう)で身を飾った。たとえば、美々しい中振袖(ちゅうふりそで)の着物を着、左肩に光綾綸子(こうりょうりんず)の幅広の襷(たすき)を掛け、造花を挿した髪頭に緞子(どんす)の鉢巻(はちまき)を巻き、手には締(しめ)太鼓を持ってたたきながら、「二条の馬場に 鶉(うずら)がふける なにとふけるぞ 立寄ってきけば 今年や御上洛(じょうらく) 上様繁昌(はんじょう) 花の都はなお繁昌」などと小歌を歌って、ときには輪になり、ときには行列をして踊り歩いた。

 のちには踊らずただ歌い歩くだけになったというが、掛踊(かけおどり)の性格が濃い。鉢巻に襷という道具だてに古来の巫女(みこ)の名残(なごり)がうかがえるが、多分に遊戯化していた。七夕は盆に接近しており、盆踊りの前哨(ぜんしょう)にもなったが、もとは娘たちの成女戒(せいじょかい)の物忌みの盆釜(ぼんがま)から発して芸能化したものといわれる。

[西角井正大]

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改訂新版 世界大百科事典 「小町踊」の意味・わかりやすい解説

小町踊 (こまちおどり)

江戸初期から中期にかけて京都で流行した風流(ふりゆう)踊の一種で,七夕(たなばた)の日に踊ったので〈七夕踊〉ともいう。7,8歳から17,18歳までの少女が美しい晴着を身につけ,鉢巻や片たすきをかけ,朱の日傘をさしかけ,手に団扇うちわ)太鼓を持って家々を訪問し,盆歌をうたいながら輪になって踊った。幼女成人になるための通過儀礼の習俗とも関係があり,盆踊の母胎の一つとなった。
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