天文衛星(日本の)(読み)てんもんえいせい/にほんのてんもんえいせい(英語表記)Japan's astronomy satellites

知恵蔵 「天文衛星(日本の)」の解説

天文衛星(日本の)

2005年7月にM‐Vロケットで鹿児島県内之浦の発射場から打ち上げられたすざく(ASTRO‐EII)は、日本で5番目のX線天文衛星。優れた分光能力と軟X線からガンマ線までの広い波長域で観測できることが特徴。高い分光能力と、広い観測帯域は、ブラックホールや超新星といった、宇宙の高エネルギー現象を物理的に解明する上で極めて重要で、その分野の研究は日本のお家芸といえる。宇宙最大の天体である銀河団が衝突・合体する様子や、巨大ブラックホールに吸い込まれる直前の物質からの放射などを観測し、宇宙の進化や、一般相対論的な時空構造の解明など、多くの科学的な貢献が期待される。なお、06年2月に内之浦から打ち上げられた赤外線天文衛星あかり(アストロF)は、重さ約960kgで、軌道傾斜角98度の太陽同期軌道に投入された。地表からの観測が難しい赤外線により、銀河の形成・進化、星生成と星間物質、褐色矮星ダークマターなどの謎を探る。装置を液体ヘリウムや機械式冷凍機で冷却して観測する。また、06年度には、太陽観測衛星ようこうの後継機であるソーラーB(SOLAR‐B)が、M‐Vロケットで打ち上げられる予定。JAXA(宇宙航空研究開発機構)はソーラーBの次の天文衛星ミッションとして、「はるか」の後継機であるVSOP2(電波天文衛星)がすでに認可を受けている。

(的川泰宣 宇宙航空研究開発機構宇宙教育センター長 / 2007年)

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