唐鏡(読み)トウキョウ

デジタル大辞泉 「唐鏡」の意味・読み・例文・類語

とう‐きょう〔タウキヤウ〕【唐鏡】

中国代の鏡。円鏡・方鏡のほか八花鏡八稜鏡などが盛行背面文様は絵画的で、鍍金ときん・金銀平脱へいだつ螺鈿らでんなどの技法によりきわめて優美。

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精選版 日本国語大辞典 「唐鏡」の意味・読み・例文・類語

とう‐きょう タウキャウ【唐鏡】

〘名〙 中国、唐代の鏡。唐代は漢以来発展してきた中国鏡に大きな変化のあった時期で、形は円・方のほかに、八稜・八花・方花があり、鏡背の図柄海獣葡萄鏡、盤龍鏡などの伝統的文様のほか、風俗画、伝説画、草花文などが自由にとりあげられるようになった。金属工芸品としてもすぐれ、螺鈿(らでん)七宝、金銀平脱などの技法が用いられた。

から‐かがみ【唐鏡】

〘名〙 中国渡来の鏡。舶来の上等の鏡。からのかがみ。
※枕(10C終)二九「からかがみのすこしくらき見たる」

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改訂新版 世界大百科事典 「唐鏡」の意味・わかりやすい解説

唐鏡 (とうきょう)

中国,唐代に製作された鏡。唐代は長安,洛陽を中心とする宮廷文化が育ち,鏡も前代と異なる趣味をもち珍重された。唐鏡は白銅質,厚手のものが多く,形も変化に富み,円形方形八花形,八稜形などがある。また鏡背の文様には,螺鈿(らでん),七宝(しつぽう),金銀平脱(へいだつ),貼銀鍍金(ちようぎんときん)などの各種の技法がみられる。六朝鏡から唐鏡への過渡期には隋鏡という鏡式がある。これには四神鏡などがあり,団華文鏡などすぐれた作品が多い。海獣葡萄(かいじゆうぶどう)鏡は初唐から盛唐にかけての鏡式であり,宋代には海馬葡萄鏡と呼ばれたが,清代にいまの名称となった。葡萄文様と禽獣をあしらったもので,それぞれの時代の様式差がある。狻猊隻鸞(さんげいせきらん)八稜鏡は盛唐の様式であり,伯牙弾琴鏡や孔子栄啓期鏡もこのころの鏡である。狻猊双鳳のかわりに,狩猟文を描いたものもみられる。

 奈良の正倉院には唐鏡の一大コレクションが伝えられているが,近年中国では長安,洛陽の唐代墳墓より各種の唐鏡が出土している。またロシア領シベリア,中央アジアからも海獣葡萄鏡などの唐鏡が発掘されている。唐鏡はその文様および技法においてきわめてすぐれており,東アジアの各種の工芸にも影響をあたえた。

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百科事典マイペディア 「唐鏡」の意味・わかりやすい解説

唐鏡【とうきょう】

中国の隋唐時代のの総称。隋代には,漢魏時代の伝統(漢鏡を参照)をふまえた四獣鏡,四神鏡などのほかに,唐代に多い海獣葡萄(ぶどう)鏡がある。唐代の鏡は,円形,方形,八稜形,八花形で,団華文,葡萄文などのほか,霊獣,霊鳥,神仙,狩猟,奏楽,胡人,鳥獣を絵画的に表現した文様がある。
→関連項目宋元鏡

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唐鏡」の意味・わかりやすい解説

唐鏡
とうきょう
Tang-jing

中国,唐代に鋳造,使用された鏡。海獣葡萄文,鳳鸞 (ほうらん) 文,花卉文,騎馬狩猟文,伯牙弾琴 (はくがだんきん) 文などのはなやかな文様が施され,形には円形,方形,八稜形,八花形などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の唐鏡の言及

【鏡】より

… 以上一連の鏡式に対して,六朝末からはかなり違ったものが現れる。宋代から,前者と区別されている唐鏡がそれである。これまでの鏡が帯圏の間を幾何学文や禽獣文で飾っているのと違って,鏡背いっぱいに大きな図様を配し,それが装飾的,かつ絵画的になっている。…

※「唐鏡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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