危険性帯有者(読み)きけんせいたいゆうしゃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「危険性帯有者」の意味・わかりやすい解説

危険性帯有者
きけんせいたいゆうしゃ

運転免許の取得者ではあるが、車などの運転道路交通に著しい危険を生じさせるおそれのある者。道路交通法第103条第1項第8号に規定されており、都道府県公安委員会交通違反による点数累積がなくとも、最長180日間の運転免許停止処分行政処分)にすることができる。警察庁は、(1)後方からの追い上げや幅寄せなどのあおり運転をして暴行傷害脅迫・器物破損などをする者、(2)危険ドラッグの使用が予想される者、(3)暴走行為を反復継続する者、(4)わざと交通事故を起こして保険金をだましとる者、などを危険性帯有者に該当するとしている。

 道路交通法第103条第1項は、6か月以下の免許停止処分にできる基準として、(1号)幻覚を伴う精神疾患発作による意識障害、認知症などにかかっている者、(2号)安全運転に支障を及ぼす身体障害のある者、(3号)アルコール麻薬大麻、あへん、覚せい剤の中毒者、(4号)前1号~3号などの疑いがあり公安委員会から医師の診断書提出を求められた者、(5号)自動車等の運転に際し、道路交通法や同法に基づく命令・処分に違反した者、(6号)重大違反唆(そそのか)しなどをした者、(7号)道路外致死傷をした者、(8号)前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき、と定めている。この第8号に該当する者が危険性帯有者である。ただ危険性帯有者の適用基準はあいまいで、2014年(平成26)に危険ドラッグが社会問題化した際には、危険ドラッグが道路交通法第103条第1項第3号に定める麻薬、大麻、あへん、覚せい剤ではないため、警視庁は危険ドラッグ使用者を第8号の危険性帯有者に含めるとの判断を示した。2017年には東名高速で、あおり運転の被害を受けた夫婦が大型トラックに追突されて死亡する事故が起き、全国であおり運転が相次いでいる実態が判明した。このため警察庁は2017年に、あおり運転も第8号の危険性帯有者の規定を適用して積極的に取り締まるよう全国の警察へ通達した。

[矢野 武 2018年6月19日]

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