削・殺(読み)そぐ

精選版 日本国語大辞典 「削・殺」の意味・読み・例文・類語

そ・ぐ【削・殺】

[1] 〘他ガ五(四)〙 (古くは「そく」)
[一] ななめにけずり落とす。鋭利な刃物を用いて、えぐるようにしてけずりとる。
① 髪の毛の端を切り落とす。髪の毛先を切ってそろえる。
※能因本枕(10C終)一五五「尼にそきたるちごの、目に髪のおほひたるを、かきはやらで」
源氏(1001‐14頃)桐壺「いときよらなる御ぐしをそぐほど、心ぐるしげなるを」
② 切りとる。薄くけずりとる。
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「先づ喪亡せるに随ひて、一の岐を除(ソキ)(さく)
太平記(14C後)二一「窮鳥(つばさ)(ソ)がれたるが如に成ぬれば」
③ 先端をとがるようにけずる。
※太平記(14C後)一三「両の耳は竹を剥(ソ)いで直に天を指し、双の眼は鈴を懸けて地に向ふ如し」
[二] 状態、また、気持などの一部を取って除く。もとの形や望ましいあり方が生かされなくなる。
① 省いて簡単にする。簡略にする。節約する。はぶく。
※源氏(1001‐14頃)鈴虫「院にまうけさせ給へりけることどもも、そぐと思ししかど」
② 圧力を加えて、相手の力、権力、自信などを弱くする。
日本開化小史(1877‐82)〈田口卯吉〉二「後の史家多くは守護地頭を置くの一事を以て朝廷の権を殺ぐものと為せり」
興趣を弱める。おもしろみなどを薄くする。
※あそび(1910)〈森鴎外〉「そして多少興味を殺がれる」
④ 他のことに時間をとる。費やす。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉五「例の掃部頭役目が、毎日毎日朝夕に少なからぬ時間を殺(ソ)いで呉れる」
[2] 〘自ガ下二〙 ⇒そげる(削)

そげ【削・殺】

〘名〙 (動詞「そげる(削)」の連用形名詞化)
① 竹や木のそげた小片材木などの表面にあるささくれ。また、その一端が皮膚につきささったもの。とげ。
※雑俳・住吉おどり(1696)「そっとおしこたへて見へぬ竹のそげ」
② 竹や木をやや大きめにそぎけずったもの。また、木端(こっぱ)
※俳諧・太郎五百韻(1679)「みつふせとってはなって矢ああ 一竹のそけ黒雲一むら立来り〈惟中〉」
③ 「そげもの(削者)」の略。
※浄瑠璃・信濃源氏木曾物語(1698頃)三「こりゃ何じゃそげめ、さりとては憎いやつ」

そ・げる【削・殺】

〘自ガ下一〙 そ・ぐ 〘自ガ下二〙 (「そぐ(削)」の自動詞形)
① 刃物でけずり取られる。けずり落とされる。また、そのような状態になる。
※和英語林集成(初版)(1867)「ハナガ sogeta(ソゲタ)
② 物事の本筋からそれて他の方面に行く。ふつうの状態からはずれる。ふつうより変わっている。常軌を逸する。
※巨海代抄(1586‐99)下「傘などの様な枝の茂た樹の上に常に急度座禅してこざ在った先ぞ、居処からしてそげた事だ」

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