切返(読み)きりかえし

精選版 日本国語大辞典 「切返」の意味・読み・例文・類語

きり‐かえし ‥かへし【切返】

〘名〙
① (「きりがえし」とも) 切り返すこと。相手が切りつけて来たのに対して、逆に切りつけること。
日葡辞書(1603‐04)「Qirigayexiuo(キリガエシヲ) スル」
剣道で、まず相手の正面を打ち、次に左右の面を数回打つことを繰り返す練習法。
※戊辰物語(1928)〈東京日日新聞社会部〉戊辰物語上「閑があればよく刀を抜いて一人で『切返(キリカヘ)し』の稽古をしてゐたが」
柔道で、相手が技を仕掛けてくるところを逆にとって倒す技。
相撲決まり手の一つ。相手の膝の外側に自分の膝を当てて横後ろにひねり倒す。〔現代文化百科事典(1937)〕
⑤ 相手の意見に反論、反駁すること。
※鉛筆ぐらし(1951)〈扇谷正造〉〝宵の強盗〟その他「現在は、一つの、新カナ漢字制限論者にとっては切り返えしの段階に来ている、ともいうことが出来るであろう」
⑥ 田の土を掘り返し、細かく耕すこと。田解(たほどき)
⑦ 一旦荒廃した新田を復旧させること。
⑧ 樹木剪定(せんてい)法の一つ。枝のすべてをその途中から切って短くすること。
⑨ 壁仕上げの一つ。中塗の上を切り返して上塗りするところを、上塗りをしないで、ざんぐりとした趣を出したもの。
鳩翁道話(1834)三「壁は中ぬりの切りかへし、戸は檜木の長へぎ」
モルタルコンクリートを手練りするとき、シャベル一方から他方へ打ち返していくこと。
⑪ (cut back の訳語) 映画で、関連のある二つの場面を交互に挿入して劇的効果を高める方法。

きり‐かえ・す ‥かへす【切返】

〘他サ五(四)〙
① 相手が刃物で切りつけて来たのに対して、こちらから反対に切る。また、切られた仕返しに切る。また、攻めてくる相手に反撃する。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)四「七十余城を燕からきって取たを、皆きり返て取たぞ」
② 相撲、柔道などで、相手が技を掛けてきたとき、素早く技を掛け返す。
③ 相手の言ってくる言葉に対して、反射的にやり返す。
※或る女(1919)〈有島武郎〉前「『歯痒くはいらっしゃらなくて』と切り返すやうに内田の細君の言葉をひったくって」
④ (土のかたまりなどを)鍬(くわ)で切ってひっくり返す。
自動車運転で、一方に回したハンドルをすみやかにもとにもどす。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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