デジタル大辞泉
「償」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
つぐの・う つぐのふ【償】
〘他ハ四〙 (古くは「つくのう」)
※観智院本三宝絵(984)中「纔に
もとのかずを返て、いまだ利の銭をつくのはず」
※
読本・
春雨物語(1808)樊噲上「春毎の遊びして銭まけたり。友だちがつぐのへとて、度々責るに」
※法華義疏長保四年点(1002)一「五百世に牛と作て之を償(ツくノヒテ)」
③ 用いる。利用する。
※龍光院本妙法蓮華経平安後期点(1050頃)二「我が力を傭(ツクノフ)て、物を得べき処には非ず」
[
補注]今日多く用いる「つぐなう」はこの語の転じたもの。転じた時期は定かでない。
つぐな・う つぐなふ【償】
〘他ワ五(ハ四)〙 (「つぐのう(償)」の変化した語)
①
財貨を出して損失・
負債を補ったり埋め合わせたりする。賠償する。弁償する。つぐのう。
※
史記抄(1477)七「
酒手を償われた事あらはやぢゃほどに、手じるしにをこされたる物をへし折て、責めうともせぬぞ」
※くれの廿八日(1898)〈
内田魯庵〉七「
損害は僕が償却
(ツグナ)ふからな」
② 財貨・労働などによって、犯した罪やあやまちの埋め合わせをする。つぐのう。
※九冊本宝物集(1179頃)六「今この苦をうけたる、彼罪業をつぐなふ也、と仰られける」
つぐのい つぐのひ【償】
※
霊異記(810‐824)下「
傭賃(ちからツクノヒ)して年価を受け〈国会図書館本訓釈 傭賃 知加良豆玖乃比春〉」
※思出の記(1900‐01)〈
徳富蘆花〉四「
亭主の平あやまりにあやまるをせめてもの償
(ツグノヒ)に」
まど・う まどふ【償】
〘他ハ四〙 つぐなう。うめあわせる。弁償する。また、元どおりにする。
※
御伽草子・
隠れ里(室町時代物語集所収)(江戸初)「其上、ちゃうす、ひき木をも、かたく、まとひ申すまじ」
※
人情本・英対暖語(1838)初「お金は後日こしらへて
上納(マドッテ)しまひます」
まよ・う まよふ【償】
〘他ワ五(ハ四)〙 (つぐなう意の「まどう(償)」と
同形の語に「まどう(惑)」があり、これが「まよう(迷)」と
意味が近似しているところから、「まよう」につぐなうの意を生じたもの) つぐなう。弁償する。
※土(1910)〈
長塚節〉
一九「
家賃でも滞った日にゃ、俺れ弁償
(マヨ)はなくっちゃ成りゃすめえし」
つぐない つぐなひ【償】
〘名〙 (動詞「つぐなう(償)」の連用形の名詞化) つぐなうこと。また、そのための
金銭、
物品、行為など。つぐのい。〔
和英語林集成(初版)(1867)〕
※それから(1909)〈夏目漱石〉一六「其上僕を蛇蝎の様に悪ませさへすれば幾分か償(ツグナヒ)にはなる」
しょう シャウ【償】
〘名〙 つぐない。賠償。
※清原国賢書写本荘子抄(1530)八「世俗の事をせず、無為を楽てゐるに、国君と同食せんなど、世俗の上の償のあらんと云は」 〔戦国策‐秦策・恵文君〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報