伏(漢字)

普及版 字通 「伏(漢字)」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 6画

[字音] フク
[字訓] ふせる・ふす・かくす

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
人+犬。〔説文〕八上に「司(うかが)ふなり。人に從ひ、犬に從ふ」とし、犬が伏して人を伺う意とするが、字はもと伏(ふくえい)をいう。古くは蠱術(こじゆつ)が多く行われ、風蠱に対しては城門に犬牲を破(はたく)する辜(ひょくこ)の法、また墓室など地中からくるものに対しては、埋蠱(まいこ)のように人と犬とを埋めて祓う伏を以てこれを防いだ。殷墓の玄室腰坑に、武将と犬とを埋めている例がある。また殷墓に残されている数千に及ぶ断首坑葬も、伏の意をもつものであろう。秦で行われた伏祠も、蠱を防ぐために犠牲を埋めたものと思われる。また軍が出発するとき、犬牲を王の車で轢(ひ)き殺す車(しやはつ)の儀礼をもいう。(服)と字源は異なるが、声義に通ずるところがある。

[訓義]
1. うずめる、人と犠牲とを埋めて祓う伏の法をいう。
2. ふせる、ふす、はらばう、かくす。
3. うつむく、したむく。
4. まちぶせる、うかがう。
5. 服と通じ、したがう。

[古辞書の訓]
名義抄〕伏 フス・カクス・カクル・ウツブス・シタガフ・ヤム・ハラバフ・フルマヒ・タガヒメ・クダル 〔字鏡集〕伏 カタブク・ウヤマフ・ツハモノ・タタル・カクル・イヌクヒ・シタガフ・ヤム・フルマヒ・フス・ウツブス

[声系]
〔説文〕に伏声として(ふく)を収める。は車軾を覆うもので、車上の式(しょく)の礼は軾に憑(よ)って伏する礼を行う。

[語系]
伏・biukは同声。ともに服事・服従の意がある。伏はまたphiukと声義近く、伏は埋蠱に対する伏(ひよく)は風蠱に対する辜(ひよくこ)で、いずれも蠱に対する呪的な方法を示す語である。

[熟語]
伏案・伏引・伏陰・伏隠・伏雨・伏伏謁伏怨・伏起・伏気伏戯伏羲伏犠・伏居・伏・伏伏闕・伏剣伏愆伏彦・伏虎・伏甲伏寇伏閤・伏伏尸・伏死・伏屍・伏祠・伏士伏伺・伏雌・伏侍・伏室・伏質・伏・伏日・伏謝・伏戎・伏処・伏暑・伏承伏軾・伏式・伏食・伏身・伏刃・伏節・伏泉・伏奏・伏息伏誅・伏聴・伏枕・伏伏弩伏匿・伏読・伏熱伏拝・伏魄・伏物伏兵・伏閉・伏弁・伏法・伏魔・伏埋・伏・伏膺・伏翼・伏卵・伏流・伏竜・伏櫪・伏歴・伏臘
[下接語]
畏伏・倚伏・隠伏・偃伏・厭伏・帰伏・起伏・伏・屈伏・降伏・三伏・伏・雌伏・折伏・初伏・暑伏・承伏・消伏・慴伏・心伏・酔伏・睡伏・説伏・潜伏・嘆伏・誅伏・調伏・踏伏・拝伏・俯伏・平伏・匍伏・伏・陽伏

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報