中村(高知県)(読み)なかむら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中村(高知県)」の意味・わかりやすい解説

中村(高知県)
なかむら

高知県南西部にあった旧市名。現在は四万十市(しまんとし)の中部から南部を占める地域。幡多(はた)地方の中心をなす。地域は四万十川(渡(わたり)川)下流を中心に開ける。旧中村市は、1954年(昭和29)中村、下田(しもだ)の2町と東山、蕨岡(わらびおか)、富山(とみやま)、大川筋(おおかわすじ)、後川(うしろかわ)、八束(やつか)、中筋(なかすじ)、東中筋、具同(ぐどう)の9村が合併して市制施行。2005年(平成17)西土佐村と合併して、四万十市となった。地域の大部分は山地で、林野率は約80%。耕地は、中筋川低地を主とする中村平野と、四万十川本流や後川河谷沿いの氾濫(はんらん)原などのわずかな平地に限られる。水稲のほか、中筋川低地のイグサ、四万十川河口に近い竹島付近の砂質地利用のナシ、北部の氾濫原の桑園などに土地利用の特色がみられ、施設園芸も盛ん。林業民有林が多く、用材、パルプ材が河口の下田港から積み出されるほか、シイタケ生産もみられる。木材加工、醸造業のほか製造業にはみるべきものがない。

 中心地区の中村は鎌倉時代から一条家の幡多荘(はたのしょう)の地。1468年(応仁2)戦乱を避けて下向した関白一条教房(のりふさ)が居館を構え町づくりをした。一条家は5代続き、四万十川河口の下田は中村の外港として栄えた。近世、1656年(明暦2)から1689年(元禄2)までは土佐藩から3万石を分与された中村藩城下であった。

 中村駅は、土佐くろしお鉄道中村線の終着駅で、さらに同鉄道宿毛(すくも)線が延長している。国道56号、321号、439号、441号が通じ、宿毛市、土佐清水(とさしみず)市などへバス路線が放射状に発達している。中村貝塚、入田(にゅうた)遺跡などの先史遺跡をはじめとして史跡、文化財が多い。不破八幡(ふばはちまん)宮の社殿(1559造)は国指定重要文化財。八束のクサマルハチ(シダの一種)自生地は国指定天然記念物。

[大脇保彦]

『『中村市史』(1969・中村市)』『『中村市史 続編』(1984・中村市)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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