上様(読み)カミザマ

デジタル大辞泉 「上様」の意味・読み・例文・類語

かみ‐ざま【上様/上方】

《古くは「かみさま」とも》
うえの方。⇔下様しもざま
「露の落つるに枝のうち動きて、人も手ふれぬに、ふと―へあがりたるも」〈・一三〇〉
上流階級の人々。身分の高い人々。⇔下様しもざま
上達部かんだちめ殿上人、―までおしなべて、武を好む人多かり」〈徒然・八〇〉

かみ‐さま【上様】

身分の高い人の妻を敬っていう語。奥方。
御館みたちも―も」〈義経記・八〉
近世、商家や一般の人の妻を敬っていう語。おかみさん
「与太郎どのの―は」〈滑・膝栗毛・初〉
近世、上方で、隠居した良家の老女を敬っていう語。かみさん。
「内儀、隠居の―をはじめて」〈浮・五人女・二〉

うえ‐さま〔うへ‐〕【上様】

天皇将軍など、高貴な人の敬称おかみ
領収書などで、相手の名前の代わりに書く語。じょうさま。

うえ‐ざま〔うへ‐〕【上様/上方】

上のほう。上部。
「衣―にひきかへしなどしたるもあり」〈・一二〇〉

じょう‐さま〔ジヤウ‐〕【上様】

うえさま」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「上様」の意味・読み・例文・類語

かみ‐ざま【上様】

〘名〙 (古くは「かみさま」)
① 上の方。⇔下様(しもざま)
※枕(10C終)二五「験(げん)なしやと打ち言ひて、額よりかみざまに、さくりあげ」
上流社会。また、上流階級の人々。身分の高い人々。うえつかた。
たまきはる(1219)「まして、かみさまはさぶらひなどぐしてのみあり」
③ (京都では北を上(かみ)というところから) 京都で北の方。
徒然草(1331頃)五〇「四条よりかみさまの人、皆北をさして走る」

かみ‐さま【上様】

〘名〙 (「さま」は接尾語)
大名などの身分の高い人の妻を敬っていう語。奥方。
※義経記(室町中か)八「御館(たち)もかみさまも、死出の山と申す道越えさせ給ひて」
江戸時代、町家で他人の妻または母を敬っていう。おかみさん。
浮世草子・好色床談義(1689)一「江戸にては、わかきもかみさまといふ。京は年のよりたるをかみさまといひ」
③ 江戸時代、上方で、良家の未亡人、または老母を敬っていう。後室様。
※俳諧・独吟一日千句(1675)第六「かみさまの気に入相の空 白猫も馴ては人のごとくにて」

かみ‐さん【上様】

〘名〙 (「さん」は接尾語)
① 江戸時代、上方で、良家の未亡人、または主人の母、老母を敬っていう。
浄瑠璃妹背山婦女庭訓(1771)四「主(あるじ)の母は納戸より運ぶ用意の酒肴(さかな)。〈略〉コレかみさん。見ればここにもてらやのやうに、七夕様が祭てあるな」
② 身分のあまり高くない、主として商人や職人などの妻。それらの家の主婦。また、女主人。
※洒落本・辰巳之園(1770)「今では中村秀松が女房になって子を持てかみさんかぶだ」
③ 自分の妻を、親しい間柄でいう。「うちのかみさん」

うえ‐さま うへ‥【上様】

〘名〙
① 高貴な身分の人を尊んで呼ぶ語。
(イ) 天皇。また、皇子。うえ。主上。
※太平記(14C後)七「上様(サマ)には未だ知(しろ)し召され候はずや」
(ロ) 将軍。また、貴人。
※太平記(14C後)二八「上(ウヘ)様の自ら御下り候て」
② 領収書などのあて名に、相手の名前に代えて書く語。じょうさま。

あがり‐ざま【上様】

〘名〙 力量、技術などが他よりすぐれていること。また、そのさま。⇔劣りざま
※無名抄(1211頃)「我よりあがりざまの人の手跡は習ひ似する事難し」

あげ‐ざま【上様】

〘名〙 (「あげざまに」の形で用いられる) 物を下から上の方へ上げるようにすること。上向き。
※半井本保元(1220頃か)「高間三郎が弓手の草摺つかみ上げて、上げ様につかもこぶしも通れ通れと三刀指たり」

じょう‐さま ジャウ‥【上様】

〘名〙 (「さま」は接尾語) 勘定書や領収書などに、あて名のかわりに書く語。うえさま。

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