ヒゴタイ(英語表記)Echinops setifera Iljin

改訂新版 世界大百科事典 「ヒゴタイ」の意味・わかりやすい解説

ヒゴタイ
Echinops setifera Iljin

西南日本暖地の草原に隔離的,残存的に分布するキク科多年草。茎は高さ1mほど,くも毛を密生し,茎頂に球状に花を集めるが,これは1小花よりなる頭花がさらに多数密集したものである。ヒゴタイ属Echinops(英名globe thistle)は地中海沿岸から西アジアに多くの種が分化し,約120種が知られている。観賞用にルリタマアザミE.ritro L.がよく栽培されている。これは耐寒性のある宿根草で,茎は高さ1mほど,まばらに分枝し,アザミに似た羽状全裂の葉を互生する。灰白色の細かいくも毛が葉裏にあるところから,ウラジロヒゴタイの名もある。夏季,茎頂に淡青色の頭花を球状につける。金属光沢のある小苞をもつ。ときに白色花のものもある。多年草であるが,栽培を続けると株が老化,枯死しやすいので,実生にするとよい。春または秋に播種(はしゆ)すれば,2年目から開花する。日当り排水のよい所を好み,石灰質を好む。多く切花として用いられ,ドライフラワーとしてもよく使われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒゴタイ」の意味・わかりやすい解説

ヒゴタイ
ひごたい
[学] Echinops setifer Iljin

キク科(APG分類:キク科)の多年草。茎は太くて筋張り、高さ約1メートル、毛を密生し、白色である。葉は羽状に深く裂け、裂片に欠刻と刺(とげ)があり、アザミの葉に似る。葉の表面は緑色で薄いくもの巣状の毛を生じる程度であるが、裏面は白色の綿毛を密生する。8~10月、茎頂または枝先に、多数の頭花が集まって径約5センチメートルの球状の花をつける。頭花は1個の管状花からなり、花冠は濃い淡青色で、先は深く5裂し、裂片は反り返る。総包は16~18枚、覆瓦(ふくが)状に並び、先は芒(のぎ)状にとがる。痩果(そうか)は毛を密生する。冠毛は鱗片(りんぺん)状の毛が中部以下で合生し、冠状になる。日当りのよい草原に生え、中部地方、中国地方、九州、および朝鮮半島と中国に分布するが、きわめてまれである。ヨーロッパ原産の近縁種ルリタマアザミE. ritro L.やE. sphaerocephalus L.は切り花用に栽培される。

[小山博滋 2022年3月23日]


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百科事典マイペディア 「ヒゴタイ」の意味・わかりやすい解説

ヒゴタイ

キク科の多年草。西南日本の草原に隔離分布し,高さ1m内外。葉は互生し,長楕円形で羽状深裂する。花は淡青紫色で,8〜10月に咲く。頭花は1個の小花よりなり,枝先に多数密に集まって径5cm内外の球花をつくる。近縁のルリタマアザミが観賞用に栽培されている。

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世界大百科事典(旧版)内のヒゴタイの言及

【トウヒレン】より

…トウヒレンの〈飛廉〉はヒレアザミに用いられた日本の漢字名であるが,トウの由来はよくわかっていない。分類が困難なこともあって,〈ヒゴタイ〉〈アザミ〉などの名が,いくつもの近縁属にわたって混乱して使用されている。 古くはトウヒレンはセイタカトウヒレンS.tanakae Fr.et Sav.を指していた。…

※「ヒゴタイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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