アザミ(読み)あざみ(英語表記)common or plumed thistle 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アザミ」の意味・わかりやすい解説

アザミ
あざみ / 薊
common or plumed thistle 英語
cirse フランス語
Kratzdistel ドイツ語
[学] Cirsium

キク科(APG分類:キク科)の一属で、ほとんどが多年草であるが、越年草もある。アザミの仲間は地中海沿岸、北アメリカおよび東アジアなどの暖帯から寒帯まで広く分布し300種以上ある。生育地は海岸から高山帯にまで及ぶ。日本には100種以上も生育し、分類のむずかしい植物群である。しかしいずれの種も葉や茎に鋭い刺針があり姿形がよく似るので、アザミの仲間であることは容易に見分けられる。ただし、キツネアザミ属、ヒレアザミ属などのようにアザミに似るがアザミ属でないものもある。葉は厚く、羽状に深く裂けるものから浅く裂けるものまであり、いずれも鋸歯(きょし)が鋭く、先端に刺針がある。葉の裏面はほとんど無毛のものからノリクラアザミC. norikurense Nakaiの葉のように白綿毛で密に覆われるものまである。いずれも根出葉をつけるが、花期にも根出葉の残るものと枯れるものとがある。

 アザミの花は多数の小花からなる頭花で、春に咲くノアザミを除いてほかはすべて秋に咲く。総包葉は筒形、鐘形または扁球(へんきゅう)形で、径1~4センチメートルほどのものが多い。フジアザミの総包葉はぬきんでて大きく、径9センチメートルぐらいにもなる。いずれも総包葉片は多数あって、輪状に多数の列となる。外側の総包葉片が短くなって覆瓦(ふくが)状になるものや、長くて鋭くとがり、外に曲がるものなどいろいろあるので、種を見分ける特徴の一つとなる。

 頭花を構成する多数の小花はすべて両性で、同形の筒状花であり、いずれも結実する。果実は普通、麦わら色であるが、ヤナギアザミC. lineare (Thunb.) Sch.Bip.とモリアザミは上半分が麦わら色、下半分が黒紫色である。

 じみではあるが美しい花なのにとげがあるためか、あまりいけ花として用いられない。しかし江戸時代には「紅筆」「ふじの雪」「あけぼの」「うすすみ」「くろべに」「かば色」「つま白」「つま紅」「白るり」「つまむらさき」など、ノアザミの園芸品種があったとされる。現在では濃紅色の花をつけるノアザミの改良品種であるドイツアザミ変種が栽培されている。根はゴボウと同様にみそ漬け、粕(かす)漬け、きんぴらなどにすると美味で食用となる。

[小山博滋 2022年1月21日]

栽培

園芸種としては、寺岡アザミが多くつくられている。本種は短日下でも温度のみで抽苔(ちゅうたい)開花するので、5~6月播(ま)きで大株につくり、12月から加温して1~3月出荷も可能である。また、このなかから優良系を選抜して栄養繁殖した標野(しめの)などは品質が向上し、促成のみならず普通栽培でも安定した切り花市況が期待できる。オニアザミやフジアザミなど大形種の直根を切って鉢でつくると、30~40センチメートル程度となり栽培しやすい。庭植えの場合も抽苔後、摘芯(てきしん)して草丈を抑えて横に張らせると、変わった観賞価値を生む。

 いずれの品種も栽培は容易で、戸外で越冬し、土質は排水と日当りのよい所にする。繁殖は株分け、実生(みしょう)いずれも可能であるが、実生は取播(とりま)きがよい。肥料は窒素、リン酸、カリの等分比、8・8・8を1平方メートル当り150グラム程度とし、基肥に3分の2、残りは追肥とする。促成栽培の場合は前年の種子を5~6月上旬に播くか、前年株を分けて利用する。

[魚躬詔一 2022年1月21日]

語源

アザミの名は『万葉集』にはみあたらず、10世紀初頭の『新撰字鏡(しんせんじきょう)』に阿佐弥(あさみ)と出る。その語源には諸説があるが、山中襄太(じょうた)(1895―1996)の『続語源博物誌』では、葉のギザギザの切れ込み「ギザ」から「ガザ」がおこり、さらに「アサミ」に転じたとしている。「ミ」は実のことであろう。また『琉球(りゅうきゅう)列島方言集』(1979)では、シマアザミの方言を37拾っているが、そのうちの16はアザ、アダ系統のことばで、沖縄では「アザ」とは「刺」を意味すると指摘している。

[湯浅浩史 2022年1月21日]


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デジタル大辞泉プラス 「アザミ」の解説

アザミ

長谷川孝治による戯曲初演は劇団弘前劇場(2001年)。2002年、第46回岸田国士戯曲賞の候補作品となる。

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