日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
パーソナル・コミュニケーション
ぱーそなるこみゅにけーしょん
personal communication
対面的状態にある2人あるいは2人以上の人々の間で直接に行われるコミュニケーションのこと。個人間コミュニケーションとか対人的コミュニケーションともよばれる。ただし、手紙や電話のように、疑似対面的状態にある個人間コミュニケーションも含まれる。このコミュニケーション形態は、マス・コミュニケーションとの対比において、〔1〕コミュニケーション参加者の少数性、〔2〕コミュニケーションの空間的限定性、〔3〕メッセージの直接的、対面的な送受信、〔4〕メッセージの柔軟な調整や修正を可能ならしめる即時的フィードバックの存在、〔5〕送り手と受け手との自由な役割交換によるコミュニケーションの双方向性、〔6〕相互作用パターンの非構造性ないし非公式性、などによって特徴づけられる。
パーソナル・コミュニケーションの根源的機能として、個人のアイデンティティの確立がある。人間は第一次的な他者とのコミュニケーションを通して、自己について学習し、自我像を形成するし、自己の感情、思想、行動が身近な人々と似たり寄ったりであることを知るならば、自我像は補強され、いっそう安定したものになる。したがって、パーソナル・コミュニケーションは人間にとって、もっとも基礎的なコミュニケーション様式であり、この土台のうえにマス・コミュニケーションや中間コミュニケーションが折り重なって、社会のコミュニケーション・システムの総体が成立するといってよい。
[岡田直之]
『E・カッツ、P・F・ラザースフェルド著、竹内郁郎訳『パーソナル・インフルエンス』(1965・培風館)』▽『J・T・クラッパー著、NHK放送学研究室訳『マス・コミュニケーションの効果』(1966・日本放送出版協会)』