ハリイ(読み)はりい

改訂新版 世界大百科事典 「ハリイ」の意味・わかりやすい解説

ハリイ (針藺)
spike rush
Eleocharis congesta D.Don ssp.japonica (Miq.) T.Koyama

針のような緑色の茎をもった水田雑草で,カヤツリグサ科に属し,畳表にするイグサ科のイとは全く別の植物である。イネを刈った後の水田やその周辺,池沼や川の岸に目だつ夏緑性の一年生植物。ひげ根があり,針形の直径0.3~0.5mmほどの細い茎が密生して,高さ15cmくらいの株を作る。葉はすべて袴形の小さな鞘(さや)となって茎の基部につき,全く目だたない。6~10月,茎頂に長さ6mm内外の茶色で長楕円形の小穂を1個つける。花は両性で,三稜形の果実には6本の刺針があり,花柱の基部は円錐形の柱基となって,果実の頂に帽子のように残存する。北海道渡島半島以南の日本全土,中国,インド,東南アジアに分布する。

 ハリイ属Eleocharisの植物は全世界の水湿地に見られ,150種ほどある。全種ともハリイと大同小異の形をしており,果実の形状,小穂の大きさ,茎の断面の形や葉鞘(ようしよう)の形で分類する。日本産の19種のうちで最も細く小さいマツバイE.acicularis(L.) Roem.et Schult.はやはり水田の雑草で,茎は長さ6~10cm前後,直径0.2~0.5mmにすぎない。北海道や本州の北寄りに多いヌマハリイE.mamillata Lindb.f.の茎は円柱形で軟らかく,シカクイE.wichurai Böcklr.の茎は硬くて四稜形をしている。またクログワイ類の茎は中が中空で,横隔膜で仕切られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハリイ」の意味・わかりやすい解説

ハリイ
はりい / 針藺
[学] Eleocharis congesta D.Don

カヤツリグサ科(APG分類:カヤツリグサ科)の一年草。稈(かん)は細く、何本も集まって株をつくり、高さ5~40センチメートル。葉は鞘(さや)に退化し、葉身はまったくない。6~10月、稈頂に1個の小穂ができる。小穂は卵形で長さ3~8ミリメートル、幅1.5~2.5ミリメートル、多数の鱗片(りんぺん)が螺旋(らせん)状に重なり合ってつく。鱗片は楕円(だえん)形で長さ1.5~2.5ミリメートル。花は鱗片の腋(えき)につき、刺針状の花被(かひ)があり、雄しべは3本、雌しべは1本。痩果(そうか)は倒卵状三稜(りょう)形で長さ0.7~1.2ミリメートル。水田や湿地に生え、日本からインドにかけて広く分布する。

[清水建美 2019年7月19日]

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世界大百科事典(旧版)内のハリイの言及

【不可触民】より

…インドのカースト社会で,4バルナ(種姓)の枠の外に置かれてきた最下層民。4バルナに属する一般住民(カースト・ヒンドゥー)にけがれを与える存在とみられ,〈触れてはならない〉人間として社会生活のすべての面で差別されてきた。ヒンディー語でアチュートachūt,英語でアンタッチャブルuntouchable,アウト・カーストout‐casteと呼ばれ,またガンディーは彼らに〈神の子〉を意味するハリジャンharijanという呼称を与えた。…

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