ツトガ(読み)つとが

改訂新版 世界大百科事典 「ツトガ」の意味・わかりやすい解説

ツトガ (苞蛾)
Ancylolomia japonica

鱗翅目メイガ科の昆虫。翅の開張2.5~3.5cm。一般に雄は雌より小さく,翅の色が濃い。前翅は薄い灰黄色,翅脈に沿って無数の暗褐色線が走り,中室の下にはぼかしたような白線があり,外縁にも白線があり,中室端に黒点がある。後翅は白っぽいが,やや灰褐色を帯びる。沖縄本島以北の日本全国,台湾,朝鮮半島,シベリア東部,中国に分布する。幼虫はシバ類に寄生するが,昔はイネにもつくとされていた。幼虫は土中に,糞や枯葉のくずを糸でつづってつとをつくり,その中にすんで食害する。若齢で越冬し,6月ころから老熟し蛹化(ようか)する。成虫は6~9月に出現し,平地でも山地でもよく灯火に飛来する。庭園の芝生に多発すると,芝草は変色し,葉先にまで糸でつとをつくる。日中は土中のつとに隠れ,夕方から夜にかけて葉部に出て食害する。被害の大きいときは芝草の生葉がなくなってしまうことがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツトガ」の意味・わかりやすい解説

ツトガ
つとが / 苞蛾
[学] Ancylolomia japonica

昆虫綱鱗翅(りんし)目メイガ科の総称。この科は、はねの開張25~35ミリメートル。はねは細長く、前翅頂はとがり、その外縁は中央ですこしへこむ。前翅には細い赤褐色の縦線が無数にあり、中室の下縁は黄白色、外縁部に銀白色帯がある。雌は雄より大きく、はねの色が淡色。北海道から琉球(りゅうきゅう)諸島まで各地に多い。国外では、台湾、朝鮮半島、シベリア東部から中国に分布する。幼虫はおもに芝生に寄生する。土中に糞(ふん)や枯れ葉のくずを糸で紡いで苞(つと)をつくり、その中から食害する。若齢幼虫で越冬し、初夏に蛹化(ようか)する。成虫は7~9月に出現し、よく灯火に飛来する。芝生に発生すると、葉の色が悪くなり、生葉がなくなってしまうことがある。

[井上 寛]


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百科事典マイペディア 「ツトガ」の意味・わかりやすい解説

ツトガ

鱗翅(りんし)目メイガ科の1種。開張30mm内外,体,前翅は黄灰色で鉛色と白色の斑紋がある。後翅は白色。雌は雄より大きく,やや淡色。日本全土,朝鮮,中国,台湾,フィリピン,インドに分布。幼虫はイネ科植物を食べる害虫で,その根ぎわに葉くずや糞(ふん)で〈つと〉を作りその中にすむ。成虫は6〜9月に出現。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツトガ」の意味・わかりやすい解説

ツトガ
Ancylolomia japonica

鱗翅目メイガ科。前翅長 10~18mm。前翅は灰黄褐色で細長く,翅頂はやや突出し,外縁は中央でやや湾入する。縁毛は基半が暗灰色,外半は金色に輝く。後翅は灰白色で前翅より幅広い。触角は雄では櫛状,雌では糸状。成虫は夏季普通にみられ,灯火にも集る。本州,四国,九州,屋久島に分布する。

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