シェクリー(読み)しぇくりー(英語表記)Robert Sheckley

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェクリー」の意味・わかりやすい解説

シェクリー
しぇくりー
Robert Sheckley
(1928―2005)

アメリカのSF作家。ニューヨーク生まれ。1952年以来『ギャラクシー』誌を中心に各種の雑誌に軽妙なSF短編を発表してたちまち流行作家となり、54年に処女短編集『人間の手がまだ触れない』にまとめられた。この作品集は彼の作風の特徴を集約した傑作ぞろいで、代表作でもある。異星人の目から見た地球人の滑稽(こっけい)な慣習、逆に地球人から見た不可解な異星人の慣習、超能力を備えた異星人と地球人の対決、未来の地球の奇怪な生活様式などを題材意表を突く新鮮なアイデアと意外な結末がその持ち味であり、軽妙なSF短編の書き手としてはフレドリック・ブラウンと並ぶ50年代の名手である。『宇宙市民』(1954)、『地球巡礼』(1957)などの短編集があり、彼が本領を発揮したのは、やはり初期から中期へかけての、これらの斬新(ざんしん)なアイデアに富んだ短編にあるといえる。長編には、一人の人間の精神を、時間と空間を越えて他人の肉体に移植するという22世紀の世界をテーマにした『不死販売株式会社』(1959)を皮切りに、善悪の価値が転倒し、悪事をなすことが出世早道である惑星を描いた『ロボット文明』(1960)、銀河宝くじに当選した男がコミカルな狂気論理翻弄(ほんろう)される『奇蹟(きせき)の次元』(1968)などがある。60年代にはほかに3冊のミステリーを書き、70年代から80年代にかけては『ドラモクレス』(1983)など3冊のSFを発表。その後、創作からは遠ざかり、科学雑誌『オムニ』のSF部門の編集顧問を務めて新人の育成にあたった。

[厚木 淳]

『稲葉明雄訳『人間の手がまだ触れない』』『伊藤典夫訳『宇宙市民』』『宇野利泰訳『地球巡礼』』『福島正実訳『不死販売株式会社』(以上ハヤカワ文庫)』『宇野利泰訳『ロボット文明』(創元SF文庫)』

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