出世(読み)シュッセ

デジタル大辞泉 「出世」の意味・読み・例文・類語

しゅっ‐せ【出世】

[名](スル)
社会的に高い身分地位を得ること。「出世して親を喜ばす」「立身出世
この世に生まれ出ること。
「先づ老子―し、次孔子出」〈雑談集・九〉
仏語
㋐仏が衆生しゅじょうを救うためこの世に現れること。しゅっせい。
俗世間を離れて仏道に入ること。また、その人。出家
比叡山で、公卿子弟の出家したもの。
禅寺住持となること。特に、紫衣を賜り、師号を受け、あるいは勅宣を蒙って官寺の住持となること。
[類語]利達立身功名立身出世成り上がり成り上がる栄進昇進昇格昇任栄達昇級昇段栄転累進特進格上げ進む身を立てる

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精選版 日本国語大辞典 「出世」の意味・読み・例文・類語

しゅっ‐せ【出世】

〘名〙
① 仏語。仏が衆生を救うために仮にこの世に現われ出ること。しゅっせい。
法華義疏(7C前)一「於是衆生。歴年累月。蒙教修行。漸漸益解。至王城始発一大乗機、称会如来出世之大意
※源平盛衰記(14C前)二八「近くは慈尊の出世(シュッセ)を待ち遠くは三世に動転なしとかや」
※続日本紀‐天平宝字元年(757)一一月壬寅「皇帝皇太后、如日月之照臨並治万国。若天地之覆載長育兆民。遂使出世之良因菩提之妙果」 〔摩訶止観‐三・下〕
叡山や興福寺などで、堂上貴族の子息の出家して、妻帯しないもの、または僧侶の高位に昇ったもの。出世者。
※太平記(14C後)九「中納言僧都経超、二位寺主浄勝二人より外は、供奉仕りたる出世・坊官一人も候はず」
④ 門跡などの貴種に近侍し教学を支える僧。出世者。
※醍醐寺新要録(1620)「貞和二年〈略〉十一日早旦入堂。出世等々相伴了」
⑤ (━する) 世の中に生まれ出ること。世に現われること。
※雑談集(1305)九「先老子出世(シュッせ)し、次孔子出」
⑥ 仏語。禅宗寺院の制度で、首座(しゅそ)から西堂(せいどう)に転ずることをいう。
※百丈清規抄(1462)三「大方西堂は出世して嗣法の定た事ぞ。〈略〉出世の時こそ嗣法は定れぞ」
⑦ 仏語。禅宗寺院の住持となること。また、特に公家の奏達によって、紫衣を賜わり、師号を受け、あるいは勅宣を蒙って官寺の住持となることをいう。立身出世の観念はここから生まれたもの。
※正法眼蔵(1231‐53)礼拝得髄「つひに発心して、園頭をつとむること始終三年なり。のちに出世せりしとき、衆にしめしていはく」
⑧ (━する) 世に出て立派な身分になること。世に栄えること。立身。栄進。しゅっせい。
※不審条々(1403)「故殿の御時も、余に入目に御座候て、御出世も遅々候」
※浮世草子・武家義理物語(1688)一「しかも次第に出世(シュッセ)の侍なれば」
女郎が一本立ちして張り見世に出ること。遊郭の勤めに初めて出ること。
評判記色道大鏡(1678)三「太夫の新艘、出世(シュッセ)の日より三ケ日の間、さげ髪にて後帯する法也」

しゅっ‐せい【出世】

〘名〙 (「せい」は「世」の漢音)
※仮名草子・夫婦宗論物語(1644‐46頃)「釈尊御入滅既に後五百歳に及び、慈尊彌勒の出世(シュッセイ)未遠しといへども、仏法を尋ぬるに」
② =しゅっせ(出世)⑧〔和英語林集成(初版)(1867)〕
※落語・孝行娘(1898)〈六代目桂文治〉「渡って聞いた耳学問、按摩取りから出世(シュッセイ)して、それから仕出した風薬」 〔李白‐竄夜郎於烏江留別宗璟詩〕
③ 世にぬきんでること。人よりはるかにすぐれていること。〔長恨歌伝〕

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普及版 字通 「出世」の読み・字形・画数・意味

【出世】しゆつせい・しゆつせ

世に出る。立身する。また、俗世間をはなれる。〔顔氏家訓、養生〕之れを(道教)に考ふるに、縱(たと)ひ仙を得とも、(つひ)に當(まさ)に死るべし。世を出づること能はず。

字通「出」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の出世の言及

【住職】より

…古くからある住持職(住持)の略称。住職になることを出世(しゆつせ)といい,住職として実際にその寺に入ることを入院(じゆいん),あるいは晋住(しんじゆう),また晋山(しんざん)という。住職という呼称は,今日では宗派を問わず多く用いられているが,歴史的にみると,寺院最高位の僧職の呼称は時代により宗派により,またそれぞれの寺院によって,さまざまの異称や尊称がある。…

【上人】より

…その綸旨を受けると,香衣を着ることができた。浄土宗では上人号を受けることを出世といった。浄土系諸宗や日蓮宗では僧の通号となっている。…

※「出世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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