ウバメガシ(英語表記)Quercus phillyraeoides A.Gray

改訂新版 世界大百科事典 「ウバメガシ」の意味・わかりやすい解説

ウバメガシ
Quercus phillyraeoides A.Gray

小型でつやのある常緑の葉を密につける様子が好まれて,生垣庭木としてよく植えられるブナ科の樹木で,バベとも呼ばれる。枝は細く,当年枝は白っぽい毛を密生する。葉は互生し,小型で先端部に少数の小さい鋸歯があり,日なたの葉は少し裏に巻く。側脈は明らかでない。托葉はすぐに脱落する。花は5月ころ,新葉と同時に開く。雄花は黄色のひも状の花序をなし,新枝の下部から垂れ下がる。コップ状の花被に包まれて,4本のおしべがある。雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)から出た短い枝上に1~2個つく。雌花は小さいまま冬を越し,翌年の秋に成熟してどんぐりとなる。殻斗には鱗片がある。本州(神奈川県以西),四国,九州,琉球,中国大陸に分布し,日本では主として海岸に多いが,内陸岩場にもみられる。大きなものは高さ10m以上の高木になるが,刈込みをしたときの萌芽力が強く,西南日本では,生垣や庭園樹として珍重される。また,備長(びんちよう)炭と呼ばれる良質の炭の材料である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウバメガシ」の意味・わかりやすい解説

ウバメガシ
うばめがし / 姥目樫
[学] Quercus phillyreoides A.Gray

ブナ科(APG分類:ブナ科)コナラ属の常緑低木ないし小高木。海岸の風衝地に群生し、幹は曲がり、普通は大木とはならないが、瀬戸内沿岸には大木が多い。葉は枝先に輪状に集まってつき、質は厚く、上半部に鋸歯(きょし)があり、長さ3~5センチメートルで日本産のブナ科植物ではもっとも小さい。4月下旬、当年枝のもとに雄花序と雌花序をつける。果実は翌年の秋に熟し、広楕円(こうだえん)形で長さ2センチメートルとなり、食用になる。名は若葉や新枝に褐毛を密生することによる。千葉県以西の本州から沖縄までの海岸に生育し、中国、台湾にも分布する。乾燥、刈り込みに強く、公園樹や垣根に使う。材は日本の樹木中もっとも重く、比重1.0前後。炭としては最上備長炭(びんちょうたん)がとれる。

[萩原信介 2020年1月21日]


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百科事典マイペディア 「ウバメガシ」の意味・わかりやすい解説

ウバメガシ

カシ

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世界大百科事典(旧版)内のウバメガシの言及

【カシ(樫)】より

…【岡本 素治】【新田 あや】。。…

【カシ(樫)】より

…ウラジロガシの葉も同様に用いられる。 ウバメガシQ.phillyraeoides A.Gray(イラスト),シリブカガシPasania glabra (Thunb.) Oerstedは同じブナ科でカシの名をもつ常緑樹であるが,系統的には少し異なる。イヌガシNeolitsea aciculata (Bl.) Koidz.もまたカシの名を有するが,クスノキ科の樹木で,材質が劣るのでこの名がついた。…

※「ウバメガシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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