精選版 日本国語大辞典 「ねぶた」の意味・読み・例文・類語
ねぶた
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東北地方とくに青森県で8月(旧暦では7月)1日から7日まで続けられる飾物行事,またはその飾物。青森市では組ねぶた(人形ねぶた),弘前市では扇ねぷたなど,華麗な絵を描いた大きな飾物が作られ(弘前では〈ねぷた〉という),夏の観光行事となっているが,大型化したのは江戸時代の文化・文政期(1804-30)ごろからといわれている。しかし,東津軽郡外ヶ浜町の旧三厩(みんまや)村でのように,草ネブタといって木の枝に灯籠を下げたものを子どもたちが毎晩各家々を担いで回り,7日には海へ流すという素朴なものも各地で行われている。都鄙を問わず飾物には中にろうそくなどを点灯させ,これが元来は盆を迎えるための灯籠であったことをうかがわせ,秋田の竿灯(かんとう)などと共通している。また,それを最後に海や川へ流すことも特徴である。
ねぶたの語は,〈佞武多〉などと当て字されるが,元来は襲いくる眠気を意味するという。七日盆には水で心身の清浄をはかろうとする伝承が多いが,ねぶたも収穫の秋を控え労働の妨げをなす睡魔を飾物といっしょに水に流し去ろうとするものであったかと思われる。
執筆者:田中 宣一
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青森県弘前(ひろさき)市、青森市そのほか東北地方各地で行われる七夕(たなばた)の行事。8月1日から7日まで(もとは旧暦7月)。眠り流し、ねむた流しなどともいい、弘前市ではネプタと発音する。竹や針金で枠をつくって紙を張り、和漢の武者絵や歌舞伎(かぶき)狂言の場面を描き、中に灯(ひ)をともして屋台にのせて車で町中を引き回す。扇形の扇ねぶた、金魚形の金魚ねぶた、歴史上の人物を人形にした組みねぶたなどがあり、大きなものは30人もの若者がつく。最終日の7日には、眠り流しといって、もとは弘前市では岩木川へ、青森市では海岸へ流したり焼いたりした。若者たちは水浴して酒宴を開く。坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が蝦夷(えぞ)征伐のとき人形に兵を隠したとか、藩主が京都に滞在中、家臣が大灯籠(とうろう)を出して諸侯の評判を得たのが始まりであるなどの民間起源説がある。本来は七夕の禊祓(みそぎはらえ)の行事で、木の枝などで体をなでて流すと、罪穢(つみけがれ)が除去されるという呪術(じゅじゅつ)と、盆の灯籠流しとが結び付いて夜の行事になったのであろう。能代(のしろ)のしゃち流し、鶴岡(つるおか)のねぶり流しのほか、北関東から長野県、愛知県にも同類の行事があり、長崎県でもネムの木枝で体をなでて睡魔を祓う呪術がある。
[井之口章次]
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