六訂版 家庭医学大全科 の解説
がん前駆症(ボーエン病/日光角化症(老人性角化腫)/白板症)
がんぜんくしょう(ボーエンびょう/にっこうかくかしょう(ろうじんせいかくかしゅ)/はくばんしょう)
Prodrome of cancer (Bowen's disease, Actinic keratosis (Senile keratosis), Leukoplakia)
(皮膚の病気)
どんな病気か
それ自身がかなり高い確率で将来がんに移行しうるものを「がん前駆症」あるいは「前がん状態」といいます。狭義には「
また、やけどの傷跡(
全身的な発がん要因を先天性と後天性に分けることも可能です。先天性の疾患としては
後天性な全身的要因としては
原因は何か
①ボーエン病
日光紫外線、HPV、放射線や砒素などが原因になります。また、青壮年者の外陰部に多発するボーエン様
②日光角化症
高齢者の顔面などの露光部に好発することから、日光紫外線、とくに中波長紫外線によってDNAに傷ができることがその原因と考えられています。
③白板症
義歯やたばこなどによる慢性の刺激が原因と考えられています。
症状の現れ方
①ボーエン病
高齢者の体幹や四肢に好発する境界のはっきりした径数㎝の褐紅色斑で、一部盛り上がったりかさぶた(
②日光角化症
黄褐色のかさぶた(痂皮)を伴う径1~3㎝の紅褐色局面のことが多く、皮膚がぼろぼろむけます。また、治ったようにみえたりするのを繰り返すのも特徴です。なお、下口唇に生じたものを日光口唇炎、陰部先端(
③白板症
こすっても落ちない口腔または外陰部粘膜の白くふやけたようにみえる局面です。また、悪性化してくると周囲に発赤を伴うようになったり、盛り上がってイボ状になります。
検査と診断
ボーエン病では慢性湿疹や
治療の方法
外科的切除が原則で、高齢者や多発例では液体窒素による凍結療法やCO2レーザー照射なども行います。また、取り残しがないことや再発の有無をみるため、治療後も定期的な経過観察が必要です。
病気に気づいたらどうする
①ボーエン病
かゆみのない褐紅色斑ができているのに気づいたら、一度皮膚科専門医を受診してください。また、以前から指摘されているほど、内臓悪性腫瘍の合併は多くありません。なお、多発している患者さんでは、砒素中毒や疣贅状表皮発育異常症などを除外するための検査も必要です。
②日光角化症
一見正常にみえる皮膚も日光紫外線のダメージをすでに受けているので、新たな病巣を生じないためにも、サンスクリーンを使用するとともに帽子などで直射日光を避けるようにしてください。
③白板症
新たな刺激を避けるため、とくに喫煙する患者さんは禁煙を厳守してください。
立花 隆夫
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報