鳥人カルト(読み)ちょうじんカルト

改訂新版 世界大百科事典 「鳥人カルト」の意味・わかりやすい解説

鳥人カルト (ちょうじんカルト)

南太平洋,東ポリネシアのイースター島で19世紀半ばまで行われた社会的,経済的,呪術・宗教的祭礼。毎年8月から10月にかけて同島南西沖のモトゥ・ヌイ小島に産卵にくるクロアジサシの卵を最初に手に入れようと,各部族の長はホプと呼ばれる特別の召使を小島に送って競い合う。勝者には鳥人のタイトル〈タンガタ・マヌ〉が与えられ,1年間タブーとなって,鳥人となった者は特別の小屋に住み,同島の宗教的儀式をつかさどる。これはイースター島の創造神マケマケの化身とみなされるためである。島の南西のオロンゴ村には,多数の卵を握った鳥人像が岩に刻まれており,この儀礼がオロンゴ村を中心として盛んに行われたことを示している。海鳥およびその卵を中心とするこのような祭礼に類似したものは,他のポリネシアの島には見いだされないが,鳥人像はハワイやマルキーズ諸島,ニュージーランドなどで壁画や彫刻に描かれている。さらに西方ソロモン諸島,ニューギニア,フィリピン,インドなどにも鳥人概念が見いだされ,人間が卵から生まれたという卵生説話との関連が示唆されている。日本では中尊寺金色堂内の須弥壇(しゆみだん)の格狭間(こうざま)に女人半身をもつ鳥人迦楼羅(かるら)が表現されているが,仏教とともにインドからガルダが伝わったもので,オセアニアにみられる鳥人概念とは関係がない。
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