化身(読み)けしん

精選版 日本国語大辞典 「化身」の意味・読み・例文・類語

け‐しん【化身】

〘名〙
① 仏語。仏の二身(法身・化身)、または三身(法身・解脱身・化身あるいは法身・応身・化身など)の一つ。仏が衆生を救うために、それぞれに応じて人や鬼などの姿で現われたものの一つで、釈迦仏などをさす。応身・応化身・変化身・化仏などと呼ばれることもある。〔解深密経‐五〕
② 仏語。転じて、菩薩鬼神高僧などが人などの姿で現われたもの。
霊異記(810‐824)中「是れ化身の聖なり」
※高野本平家(13C前)六「件の入道はただ人にあらず。慈恵僧正の化身(ケシン)なり」
歌舞伎などで、妖怪変化のこと。また、これに扮(ふん)する時に用いる隈取り

か‐しん クヮ‥【化身】

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デジタル大辞泉 「化身」の意味・読み・例文・類語

け‐しん【化身】

[名](スル)
仏語。世の人を救うために人の姿となって姿を現した応身おうじん
神仏などが姿を変えてこの世に現れること。また、そのもの。「神の化身」「悪魔の化身
抽象的で無形の観念などが、形をとって現れたもの。「美の化身
歌舞伎で、化け物などのこと。また、それにふんするときの隈取くまど
[類語]権化

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「化身」の意味・わかりやすい解説

化身
けしん

仏がかりに現した姿をいう。サンスクリット語ニルマーナカーヤnirmāakāyaの訳。変化した身体の意。変化身(へんげしん)ともいう。仏の三身(法身(ほっしん)、報身(ほうじん)、化身(けしん))の一つで、仏が生きとし生けるものを救済しようとして、その生きものと同じ姿をとったものをいう。教化すべき人々の能力や素質に応じて現れる身体という意味から、応身(おうじん)とも漢訳される。

 英語のインカーネーションincarnationの訳語としての広義における化身の概念は、神や仏、あるいは超自然的、超人間的存在が、ある目的のために、一時的ないし継続的に人間や動物などの形相(けいそう)をとってかりに姿を現したものの意。キリスト教では、イエスは人間救済のための神の化身とみなし、インカーネーション(託身(たくしん)、受肉(じゅにく))と称する。

[坂部 明]

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普及版 字通 「化身」の読み・字形・画数・意味

【化身】けしん

仏教語。衆生のために仏身が種種の形で現われること。隋・慧遠大乗義章、十九〕佛、衆生に隨ひて種種の形を現ず。或いは人、或いは天、或いは、或いは鬼、~名づけて身と爲す。

字通「化」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「化身」の意味・わかりやすい解説

化身
けしん

変化して現出した身体。神や妖精などが姿を変えて現れること。キリスト教では,イエスは人間救済のための神の化身とみなす (→インカルナチオ ) 。ヒンドゥー教では,アバターラといい,ビシュヌ神やシバ神は種々の身体を現出するが,ビシュヌ神の 10種の化身が特に有名。仏教では化身は nirmāṇakāyaの訳で,三身の一つ。仏が衆生を救済しようとしてそれぞれの衆生と同じ形相をとって変現した姿。

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デジタル大辞泉プラス 「化身」の解説

化身〔小説〕

宮ノ川顕による小説。2009年、第16回日本ホラー小説大賞にて大賞受賞。応募時のタイトルは「ヤゴ」。同年、「雷魚」「幸せという名のインコ」の2作を併せ刊行。

化身〔曲名〕

日本のポピュラー音楽。歌はシンガーソングライターで俳優の福山雅治。2009年発売。フジテレビ系で放送のドラマ「魔女裁判」の主題歌。

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世界大百科事典(旧版)内の化身の言及

【仏身論】より

…大乗仏教になって仏身に関する思索が深まり,中観派の竜樹,さらには瑜伽行派の弥勒(マイトレーヤ),無著世親らの論師たちによって最終的に3種の仏身をたてる〈三身説〉が成立した。三身とは(1)法身(ダルマ・カーヤdharma‐kāya),(2)報身(サンボーガ・カーヤsambhoga‐kāya),(3)応身(化身,ニルマーナ・カーヤnirmāṇa‐kaya)の3種,あるいは(1)自性身(スババーバ・カーヤsvabhāva‐kāya),(2)受用身(サンボーガ・カーヤsambhoga‐kāya),(3)変化身(ニルマーナ・カーヤnirmāṇa‐kāya)の3種をいう。これら三つは論師あるいは宗派によって微妙に解釈を異にするが,前者の三身を略説すると次のごとくである。…

※「化身」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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