驕る者久しからず(読み)おごるものひさしからず

ことわざを知る辞典 「驕る者久しからず」の解説

驕る者久しからず

栄華をきわめ絶大な権力を握っていても、おごり高ぶる者は長続きせず、やがて没落する。

[使用例] 気候の変化したる幾万年の後に至るも果して、今日の如く、人類がこの地球の征服者であると誰が確信するものがありましょうか。適者生存は、犯し難い真理であります。驕る者久しからず、これを思えばもっと人間は、動物に対して、親切であるべき筈である[小川未明*天を怖れよ|1914]

[使用例] そう、私は、私たちは、わずか十数年の命運しかもたなかったけれども、この地球上に一つの国家を造ろうとしたのだ。〈略〉奢れるものは久しからずのたとえ通り、それはつかの間に滅びたけれども[高橋和巳堕落|1965]

[解説] 「驕る者」は「驕れる者」ともいい、また「驕る平家」ともいいます。いずれにせよ、平安時代末期に栄華をきわめ権勢をほしいままにして、「平氏にあらずんば人にあらず」と横暴な振る舞いを続けた平家一門が、清盛没後数年にして壇の浦で滅亡した運命を想起させる表現といえるでしょう。同時に、ことわざは傲慢にふるまう権力者に対する時代をこえた批判となっています。
 出典については、老子とする説もありますが、直接大きな影響を及ぼしたのは、鎌倉時代初期から琵琶法師によって語りつがれた平家物語冒頭の次の一節でしょう。「おごれる人も久しからず、只春の夜の夢の如し。たけき者も遂には亡びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」。
 なお、江戸時代には、「驕る代官末とげず」や「驕る平家に二代なし」「驕る平家は内より崩る」などの派生形も使われていました。

英語〕Pride goes before a fall.(傲慢は没落に先立つ)

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