首飾り(読み)クビカザリ

デジタル大辞泉 「首飾り」の意味・読み・例文・類語

くび‐かざり【首飾り/×頸飾り】

宝石・貴金属などをつないだ、首にかける装飾品ネックレス
[類語]ネックレスペンダントチョーカーロケット

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「首飾り」の意味・わかりやすい解説

首飾り
くびかざり

ネックレスnecklace。首の回りや胸元などを飾る装身具。主として紐(ひも)状の飾りを輪にして、首に掛けたり巻いたりするものであり、フランス語のコリエcollierにあたる。

[平野裕子]

種類

素材、形状、用途などから種類や名称はさまざまであるが、その形状から、チェーン型、ロザリオ型、ネックバンド型、ペンダント型、カラー型、の五つに分類される。

(1)チェーン型 金属製のチェーン(鎖)を輪にしたもの。鎖の形状からコイルチェーンとブロックチェーンに大別される。

(2)ロザリオ型 ビーズ、宝石、木の実などを細紐や糸に通して数珠(じゅず)つなぎにしたもの。チャプリット(短い1連の玉飾り)、チョーカー(同じ大きさの玉をつないだ短いもの)、グラデーション(中央に大きな親玉を置いて後ろに向かってしだいに小さい玉を配列して組んだもの)を基本に、長いものではロープネックレス(綱のように2連以上に巻くもの)やオペラレングス(1890年代にオペラ見物などに用いられた正装用の長いもの)がある。オペラレングスに対してはマチネレングス(昼間の外出用の長さ)がある。エスクラバージュ(奴隷の意。宝石や七宝(しっぽう)などを何連もの鎖で等間隔につないだもの)、リビエール(川の意。ダイヤモンドなどの、とくに2連以上のもの、または流れるような飾りのもの)もこの型に属する。

(3)ネックバンド型 首の付け根から上に密着させて巻く首輪型。ネックリング、ネックリットともいわれ、ぴったり首に巻いた革バンドやリボン、密着したチョーカーもこの型。とくに幅の広い装飾バンドは、ドッグカラー(犬の首輪)とよばれている。

(4)ペンダント型 ペンダント(垂れ飾り)付きのネックレス。今日でも男女ともに用いる。宝石、飾りふさ、時計、ロケット、十字架メダル、魔除(まよ)け、木彫りなどを、鎖や細紐やリボンに通して吊(つ)り下げるもので、単に象徴的な意味で用いることもある。ジランドール(周囲に小さな宝石の飾りのついたペンダント付きのもの)、ソートワール(長い鎖の首飾りで、緩く肩に掛ける。時計や財布をぶら下げることもあった。またリボンを交差して勲章を吊るすものもある)、ラバリエール(宝石をちりばめたペンダント)などがある。

(5)カラー型 幅が広く肩や胸を覆うほどの大きさのもの。古代エジプトに代表されるビブネックレス(首の付け根から胸にかけて、放射状にデザインされたよだれ掛け型)は、カラーサークレットの呼び名もある。

 そのほかに、絹の組紐を編んだもの、ループタイのような留め具が上下するデザインのもの、生花をつないだもの、などがある。

[平野裕子]

歴史

首飾りは古来もっとも代表的な装身具として、装飾だけではなく、象徴あるいは呪術(じゅじゅつ)的な意味で用いられることが多かった。石器時代の遺物には、貝殻、骨、木の実、角(つの)、歯、石、素焼の列片がみられるが、これらはしだいにガラス、陶器、金属、ビーズ、宝石にかわっていく。

 古代エジプトにはチャプリットに加えて、鮮やかな色彩のビブネックレスが登場した。メソポタミアでは、ざくろ石、紅玉髄(カーネリアン)、トルコ玉などのチョーカーやロングネックレスがみられ、また精巧なエトルリアの粒金細工や、ギリシアの宝石入りの鎖やカメオ、ローマの真珠の使用などが注目される。中世になるとビザンティンが中心となって、豪華な金銀宝石細工にガラス、七宝などの多彩な人工宝石を加えていく。しかしネックレスは、一部上流階級の身分象徴にとどまっていた。中世末期にドイツを中心に用いられた金銀の鎖のネックレスは、ルネサンス期を迎えると、婦人の間にも広まり、重厚な鎖の時代を迎える。一方イタリアでは、カメオやバロック真珠などの宝飾技術が発達し、近世を通じてカメオと真珠はネックレスの花形となった。そして17世紀には、さらに多面体カットのダイヤが加わる。

 服装の簡素化とともに、18世紀初期から一時ネックレスは沈滞するが、同末期には簡単なリボン結びにかわり、さらに19世紀に入ってもかつての華麗さを取り戻すことはなかった。手細工の評価が高まり、ふたたびネックレスが脚光を浴びるのは19世紀も末期近くであり、人造宝石などの科学技術の発達とともに著しく大衆化するのは、第二次世界大戦以後である。また20世紀後半は、装身具の価値感が大きく変化し、模造宝石の使用に端を発し、とくにネックレスは自由な用い方がされるようになった。通常小さく短いものは素肌に、長いものは衣服の上に着けるのが基本であるが、ファンシーな装いとカジュアルな装いでは、おのずと材質やデザインは変わってくる。しかし形式的な装い方にとらわれず、自由な使い方をするのが最近の傾向で、異質なものを組み合わせたり、極端に大きなものを用いたりする。

 ネックレスのクラスプ(留め具)にも微妙な流行があり、最近はクラスプ自体がアクセントとなる凝ったデザイン、あるいはクラスプをまったく感じさせないデザインが増えてきた。またクラスプにくふうを凝らして、1連のものを2連、3連にしたりもする。

[平野裕子]

習俗

各種のアクセサリーのなかで、首飾りはおそらくもっともバラエティーに富み、また世界各地で広く用いられるアクセサリーであるといえる。それは、首がアクセサリー装着部位としてかっこうの場所であるからにほかならない。まずなによりも胸元は体の前面の中心にあるため、非常に目につきやすい。また環状のものでありさえすれば、装着にとくにくふうを凝らさずともよく、形式や大きさの選択範囲が大きい。古代エジプトの王族の黄金に輝く豪華な胸飾りもあれば、マレー半島のネグリト系の人々がかつて身につけた籐(とう)を輪にしただけの簡素なものもあり、トロブリアンド諸島民のように海に近い人々は貝殻を数珠(じゅず)状につないだ首飾りをつくる。アフリカのマサイの人々の色鮮やかなビーズの首飾りは細かい細工が美しい。

 現代社会においては首飾りは装飾として用いられることが圧倒的に多いが、人類社会全般からみると、社会的身分を表示したり、宗教的・超自然的意味が込められていた場合が少なくない。インドのケララ州の、かつて母系制の発達していたことで有名なナヤールの女性は、身体的成熟を迎える前に擬似的な結婚の儀式を経ねばならなかった。このとき、儀礼的な夫として選ばれた男性から首にターリとよばれる金の首飾りが掛けられ、以後、成熟した女性、子孫を産むことのできる女性のしるしとして、これを一生身に着けたのであった。東南アジアから中国にかけて、首飾りをした幼児をみかけることがあるが、これは悪霊から幼児を守る護符の意味をもっている。またキリスト教徒の十字架は、他のどこの部位よりも胸に下げるのがふさわしいのであろう。

 もっとも人目をひくのは、首に輪をはめ、首自体を長く変形させてしまうものであろう。アフリカにもみられるが、ミャンマーのパダウンの女性のそれが有名である。そもそも「パダウン」とは「長い首」という意味だという。かつてパダウンの女性は5歳ごろから金や銅の螺旋(らせん)状の首飾りをつけ始めた。輪が多く、首が長いほど美しく、豊かであるとされた。その祖先の住んでいた中国には虎(とら)が多く、のどを保護するためにこの首飾りをつけたと彼らは説明する。しかしこの首飾りは女性たちに一定の制約を与えるものといえるかもしれない。螺旋をはめた首は通常の3倍以上の長さに伸ばされ、輪がなくてはまっすぐに保つことができなくなってしまうと信じられていた。不貞をはたらいた女性は首飾りを外され、以後は両手で首を支えなければ立っていることができなくなるとして恐れさせたのである。

[横山廣子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラス 「首飾り」の解説

首飾り

雨森零(あまもりぜろ)の小説。1994年、第31回文藝賞受賞。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報