飲食(読み)いんしい

精選版 日本国語大辞典 「飲食」の意味・読み・例文・類語

いん‐しい【飲食】

落葉集(1598)「飲食 いんしい」
読本唐錦(1780)三「娘は明暮、唯涙にふし沈みて飲食(インシイ)を廃し」
[語誌](1)インシイはインシの転訛形。「飲食」は、古くから呉音でオンジキと読まれたが、中世頃から、ほかに漢音のインショク・インシ・インシイの語形も見られるようになる。
(2)室町末頃のキリシタン文献では、主としてオンジキを掲げるものが多く、この語形が広く行なわれていたことをうかがわせるが、「落葉集」にヲンジキのほかにインシイが見え、他のキリシタン文献にもこの語形が散見されるところから、このころにはインシイとオンジキが併用されたかと思われる。
(3)一三〇六年頃成立した「聚分韻略」では、インシが飲食する物、インショクが飲食することだと説いている。しかし、室町から近世にかけて必ずしもこの区別がなされたとは言い難い。

おん‐じき【飲食】

〘名〙 (「おん」は「飲」の、「じき」は「食」の呉音) 飲みものと食べ物食物。また、飲むことと食べること。いんしょく。いんしい。
※続日本紀‐宝亀三年(772)四月丁巳「衣服飲食一擬供御
今昔(1120頃か)九「此の客人(まらふと)等、不飲食(おんじきせ)ずして」
[語誌]→「いんしい(飲食)」の語誌

いん‐しょく【飲食】

〘名〙 飲み物と食べ物。また、飲むことと食べること。飲み食い。おんじき。いんじき。いんしい。いんし。
平家(13C前)一二「飲食(ヰンショク)〈高良本ルビ〉の名字をたて、湯水をものどへいれず」
歌謡山家鳥虫歌(1772)上・摂津人食に尽きぬれば此石に向ひ礼をなせばいんしょく悉く出ず」 〔易経‐乾卦〕
[語誌]→「いんしい(飲食)」の語誌

のみ‐く・う ‥くふ【飲食】

〘他ハ四〙
① 飲んだり食べたりする。飲みかつ食う。のみくらう。
土左(935頃)承平四年一二月二八日「さけ、よきものどももてきて、ふねにいれたり。ゆくゆくのみくふ」
② 食物などをかまないで飲みこむ(日葡辞書(1603‐04))。

いん‐し【飲食】

※全九集(1566頃)一「疾を防ぐとは、飲食(インシ)を節し温涼にかなひ」
[語誌]→「いんしい(飲食)」の語誌

のみ‐くい ‥くひ【飲食】

〘名〙 飲むことと食うこと。飲んだり食ったりすること。いんしょく。のみくらい。
談義本・教訓雑長持(1752)三「せめて先々で、呑喰(ノミクイ)でもする事か」

のみ‐くら・う ‥くらふ【飲食】

〘他ハ四〙
① 飲んだり食ったりする。飲食する。のみくう。〔書言字考節用集(1717)〕
② 酒をしたたか飲む。

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デジタル大辞泉 「飲食」の意味・読み・例文・類語

いん‐しょく【飲食】

[名](スル)飲むことと食べること。のみくい。また、飲み物と食べ物。「検診の前に飲食しないように」「飲食店」「飲食物」
[類語]飲み食い酒食食事御飯腹拵えまんまおまんま

おん‐じき【飲食】

飲むことと食べること。飲み物と食べ物。いんしょく。
「下物は極楽の―乃至ないし北鬱単越ほくうつたんおつ香廚こうちゅうよりかすめ来らせましたる」〈露伴・新浦島〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「飲食」の読み・字形・画数・意味

【飲食】いんしよく

食事。〔論語、泰伯〕子曰く、禹は吾(われ)然すること無し。飮(うす)くして、孝を鬼に致し、衣を惡しくして、美を黻冕(ふつべん)(礼服)に致す。~禹は吾(われ)然すること無し。

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