長井院(読み)ながいいん

日本歴史地名大系 「長井院」の解説

長井院
ながいいん

宇佐大鏡に「臼杵郡 長井院十六丁」とみえる。院は筑前赤馬あかま(現福岡県宗像市)のような例を除けば、豊前宇佐うさ郡から南へ豊後・日向・大隅薩摩と集中的にみられる地名で、古代官道沿いに分布する傾向があり、八世紀初頭に起こった大隅・日向の隼人の反乱鎮定との関係を考えさせる。院は倉であり、現大分県の安心院あじむの場合も、承和一一年(八四四)六月一七日の宇佐八幡宮弥勒寺建立縁起(石清水文書)に倉の存在が明記されており、隼人鎮定軍の補給や武器の倉が本来であったという説が出されている。平安時代中期以後、古代の郡・郷制が中世的に改編されていくなかで、しだいに倉の機能が郡・郷などとともに所領単位の核となり、ことに豊後・日向・大隅・薩摩地域では郷や庄園と並ぶ所領となった。大鏡によれば、長井院浮免は寛治二年(一〇八八)に封民一六人の代替として公田一六町を神領として立券し、大宮司宇佐公基が私領として娘に譲り、それを宇佐公通が買得している。浮免とは本来水田が固定されておらず、毎年免分を引募るかたちで免田が設定されるものである。大鏡の頭注によれば、長井院浮免とは島津庄を立券する際に立券の使俊弘が浮免を停止し、「長居内田貫田牟田」を浮免分として豊前宇佐宮領として四至を定め立券したものという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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