浮免
うきめん
10世紀以降の土地制度の一つである免田(めんでん)の一形態。浮免田ともいう。年貢、公事雑役(くじぞうやく)のうち後者が免除される雑役免田に多く、面積は一定であるがその坪付(つぼつけ)は固定せず、年によって場所が浮動する免田をいう。したがって浮免田の受給者(国衙(こくが)などにかわって、免除された分の雑役などを取得する権利を与えられた者)は国衙などを介して得分を取得した。11世紀以降坪付の固定化(定免化)が進み、雑役免田を中心とした荘園(しょうえん)が成立する。しかし、中世に入っても荘官や地頭の給田として残り、作人不定の場合も浮免ということがあった。
[木村茂光]
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浮免【うきめん】
国衙(こくが)領や荘園における免田の一形態。国衙が正税に代えて寺社などに諸給付として雑役を与えた雑役免田は,一定の収穫を確保するため,面積だけを定め,下地は損(そん)田(天災により収穫が減少した田)を避けて得(とく)田から指定された。このように下地が浮動(不定)の免田をいう。11世紀に耕地の安定化に伴い固定(定免)化が進行するが,中世,荘園領主から地頭・荘官に給分として与えられる雑役免田が浮免の形をとることがあった。→国衙・国府
→関連項目免
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うき‐めん【浮免】
〘名〙
①
荘園制における免田
(めんでん)の
一種。一定面積だけを決めておいてその場所を指定せず、年によって変わる免田。浮き免田。
※和泉久米田寺文書‐宝治二年(1248)一二月五日・関東下知状「次在庁勘状事、本免与浮免不二書顕一、其足所二掠申一也云々」
② 江戸時代に
薩摩藩で郷士に給した田の一種。
実体は
武士が開墾し、自作自収する土地であった。浮き免地。
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うきめん【浮免】
10世紀以降,国衙領や荘園における免田の一形態。官物(かんもつ)(年貢)や雑役(ぞうえき)が免除される下地が固定せず浮動するもの。10世紀になると国衙はそれまでの正税にかえて公民の負担する雑役を寺社等に対する諸給付にあてるようになる。この雑役を免除された旧地を雑役免田というが,その田地は当初特定地に固定しておらず,年ごとに郡郷内を移動した。その際,損田(天災により収穫が減少した田)を避けてその年々の得田が指定されるのが原則であった。
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