改訂新版 世界大百科事典 「金村古墓」の意味・わかりやすい解説
金村古墓 (きんそんこぼ)
Jīn cún gǔ mù
中国，河南省洛陽市の東郊約21kmにある金村の付近で発見された戦国墓群。金村は，漢魏洛陽城址の宮城北側に位置し，この地は邙（ぼう）山の南山麓に当たる。古墓群は，金村の東側，漢魏洛陽城址の北東角内側に存在する。1928年の大雨の後，土地の一部が陥落し，墓室が現れ，村民によって8基の墓が盗掘されたといわれている。8基の墓のうち6基は，約75mの間隔を置いて漢魏洛陽城址の北壁に沿って東西に並び，他の2基の墓はその南東に並んで存在した。これらの墓に墳丘はなかったもようで，8基の墓はいずれも竪穴木槨墓であったと考えられている。
1934年のW.C.ホワイトの著書によると，すべての墓室は墓壁がほぼ垂直の正方形竪穴墓壙で，底に石板を敷きつめ，その上に松角材で八角形の槨室をつくり，その外側に河原石をつめ，槨の上には河原石と木炭を交互に3層ずつ重ねてあったという。さらに墓室の南側に入口が設けられ，両側を土で固めた墓道がつき，槨室の中央には二重の漆塗の棺が置かれ，室の壁にも同様の漆を加え，上辺に壁画の帯があったと述べている。しかし，八角形の槨室，室内の漆壁画などは，他に例のないもので，これらの墓が発掘調査を経た遺構でない点から見てやや疑わしい。これらの墓から出土した副葬品には青銅器を中心として，銀器，漆器，玉器，陶器などがあるが，盗掘の結果，世界各地の博物館，収蔵家へ四散した。副葬品は逸品ぞろいで，なかでも金銀象嵌狩猟文鏡，
羌（ひようきよう）編鐘，青銅製人俑，黄金製帯鉤（たいこう），嵌玉帯鉤，怪獣穀粒文玉耳杯などが注目される。羌編鐘には〈唯廿又再祀，羌乍……〉の銘があるが，この年代については，周の霊王22年（前550）説，周の威烈王22年（前404）説，晋の烈公22年（前398）説，周の安王22年（前380）説などがあり定説をみない。しかし金村古墓出土の遺物の内容から見ると，年代は戦国中・後期あたりが妥当なところで，この墓地は戦国時代韓の大型墓群である可能性が強い。
執筆者：飯島 武次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報