達磨(玩具)(読み)だるま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「達磨(玩具)」の意味・わかりやすい解説

達磨(玩具)
だるま

禅宗の始祖達磨大師坐禅(ざぜん)姿をうつした縁起物玩具(がんぐ)。赤塗りで、座におもりをつけ、倒してもすぐ立つようにつくった張り子製の起きあがり物が、全国各地でつくられている。ほかに土焼き、練り物、木製などがあり、種類が多い。

 室町時代には、起きあがり達磨の祖型である起きあがり小法師(こぼし)がまずつくられた。張り子製の起きあがり達磨が登場してきたのは、起きあがり小法師玩具が上方(かみがた)から江戸に伝えられてからのちで、享保(きょうほう)年間(1716~36)以降のことらしい。江戸では七福神などの起きあがり人形もつくられたが、達磨の形をしたものがもっとも人気を集めて代表的な作品となり、一般に張り子製の達磨のことを「起きあがり」とよぶようになった。ことに養蚕が盛んな関東地方では、蚕の上簇(あがり)にちなんで、起きあがり達磨が縁起物に求められた。この習俗は現在もみられ、歳末から3月ころには各地で達磨市が開かれ、農家や商家筋の商売繁盛、招福開運の縁起物として、市(いち)でにぎやかに売買されている。

 愛知県をまたほぼ境にして、東日本では関東地方を中心に白目のままの目無し達磨、西日本には黒目の鉢巻き達磨が多くみられる。目無し達磨は、これを求めて祈願をかけ、成就の際に黒目を入れる。現在でも入試合格や当選などの際に行われる。また、達磨の赤衣に模した赤塗りの達磨玩具が、疱瘡除(ほうそうよ)けに病児の枕元(まくらもと)に飾られたりした。疱瘡が赤色を嫌うという俗信からである。種類には、普通の鬚(ひげ)達磨以外に、女達磨、童女型などが、郷土玩具として全国に広く分布している。

[斎藤良輔]

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