造園植物(読み)ぞうえんしょくぶつ

改訂新版 世界大百科事典 「造園植物」の意味・わかりやすい解説

造園植物 (ぞうえんしょくぶつ)

住居や都市内の庭園,公園,街路など生活の身近に配植され,修景観賞装飾,環境保全,レクリエーション,さらに実用(防風,防火,遮へい,境界標識など)の目的に使用される植物をいう。庭園植物,公園植物,街路樹生垣樹(〈生垣〉の項目参照)など植栽場所などで分けられている。造園植物として使われやすい条件は次のように考えられる。形態に関しては全体が整っているもの,趣のあるもの,花,果実,葉などが美しいもの,特徴のあるものなど,性質に関しては強健なもの,環境に対して適応性のあるもの,とくに悪環境に耐えるもの,萌芽性,発根性の強いものなどである。繁殖に関しては挿木が容易で,大量生産ができるものが有利である。育成管理に関しては形が仕立てやすいもの,病虫害に強いもの,傷害からの回復力が強いものなどが望ましい。以上の条件が備われば大都市などで大量に使用できるが,一方,条件に適合しないものも庭園では使用可能である。

 人類の生活に余裕が生まれて,食用,衣料用,薬用など生活に必要な物資を得る目的以外に,生活を快適にする目的で植物を用いたことが造園植物利用の始まりとみると,古代エジプトに見られた緑陰樹がそうである。古王国から中王国時代には実用的な樹木園が存在し,新王国時代には庭園にアカシアナツメヤシ並木と池に水草が見られた。ギリシア時代に入ると,庭園も実用から装飾風になり,観賞植物も盛んに使われ,公共の場にもスズカケノキが植栽された。日本では飛鳥時代から庭園の記録が見られるようになり,水辺の植物などが使われたと想像され,奈良時代には花木が賞されたようである。造園植物は種々の形に仕立てられたものが多く,また移植後の活着をよくするために根回しもよく行われる。植栽にあたっては配植計画が必要であり,管理では剪定せんてい),刈込みが重要な作業となる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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