越・超(読み)こす

精選版 日本国語大辞典 「越・超」の意味・読み・例文・類語

こ・す【越・超】

[1] 〘他サ四〙 一方から他方へやる。物の上を通って、向こうにやる。渡す。運ぶ。越えさせる。
書紀(720)崇神一〇年九月・歌謡大坂につぎ登れる石群(いしむら)を手越(たごし)に固佐(コサ)ば固辞(コシ)かてむかも」
[2] 〘自サ五(四)〙
① (自分自身を越えさせる意から転じて) 物の上を通って一方から他方へ行く。
万葉(8C後)一・五「わが大君の 行幸(いでまし)山越(こす)風の」
② 他を抜いて先に出る。追い越す。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「大将を人よりこして大臣になして」
③ 向こうへ行く。また、こちらに来る。
※後拾遺(1086)雑二・九四一「東路の其はらからは来たりとも逢坂まではこさじとぞ思ふ〈相模〉」
④ 時間の限定された長さや、区切りを渡る。時間、時節を過ぎる。経過する。多く、去年から今年、今年から来年など、年をわたることにいう。
※俳諧・竹馬狂吟集(1499)八「行としをうば祖父やわするらん 計会すればとしもこされず」
⑤ ある標準より上になる。ある数値を過ぎて上になる。以上になる。
平家(13C前)一〇「馬のくさわき、むながいづくし、ふと腹につくところもあり、鞍つぼこす所もあり」
⑥ まさる。ぬきんでる。
御伽草子天神の本地(室町時代物語集所収)(室町末)「すがはらの大じんに、こす人もなかりけり」
⑦ 住む所を他に移す。引っ越す。移転する。
洒落本・妓者呼子鳥(1777)一「ヤ今吉めは〈略〉またよし町へこしたかな」
[語誌]本来は、「越える」に対する他動詞であったと考えられる。古くは、生物動作には「越える」を用い、無生物の風や波の動作に限って「越す」が用いられたと認められる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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