計会帳(読み)けいかいちょう

改訂新版 世界大百科事典 「計会帳」の意味・わかりやすい解説

計会帳 (けいかいちょう)

日本古代律令制における公文書の一つ。その起源は隋,唐の律令制にあり,日本はこれを継受して,大宝令,養老令では公式令にその書式が定められていた。律令制のもとでは,官司相互に伝達される行政命令,行政報告は公文書によるのを原則とした。計会帳は,そのような公文書が確実に伝えられたか否かを確認するために毎年諸司が作成した公文書で,それには(1)太政官諸国・諸司に発給した公文書の目録,(2)中央の各官司が他の官司との間で授受した公文書の目録,(3)諸国が授受した公文書の目録,の3種があり,前年8月1日から当年7月末日までの間にそれぞれの官司が授受したすべての文書が記載された。(2)と(3)は太政官に送られる。したがって太政官では,これらと(1)を照合すれば,1年間に出された行政命令が履行されたか否かを確認することができる。(1),(2)の実例は残っていないが,(3)には734年(天平6)の〈出雲国計会帳〉,783年(延暦2)の〈伊勢国計会帳〉が残されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「計会帳」の意味・わかりやすい解説

計会帳
けいかいちょう

律令制(りつりょうせい)下において、地方官は中央政府に政務を報告するために4種の帳簿(「四度公文(よどのくもん)」)を提出するが、その一つである朝集帳の付属帳簿(枝文(えだふみ))をいう。諸国の国衙(こくが)が1年間に中央政府や他国との間で授受中継した詔(しょう)・勅(ちょく)・符(ふ)などの公文書を、授受の月日と使人の姓名とともに記帳し、期日までに太政官(だいじょうかん)に提出した帳簿である。太政官では中央諸司主典(さかん)と諸国朝集使参集のもとで提出された計会帳を監査し、公文書の授受に遺漏がなかったかどうかを確認した。計会帳は正税(しょうぜい)帳とともに律令制地方行政の実態を明らかにするための貴重な資料の一つであり、「出雲(いずも)国計会帳」「伊勢国計会帳」が現存する。

[平田耿二]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「計会帳」の解説

計会帳
けいかいちょう

律令制下の公文(くもん)。1年間に各官司間の文書授受がきちんと行われたかを太政官が照合・監査する(計会という)ために,毎年7月までの文書授受の状況を各官司でまとめて太政官に提出した。大宝令制では諸国の計会帳は大帳使(だいちょうし)が持参したが,養老令制では朝集使に変更された。8世紀の伊勢国計会帳と出雲国計会帳が現存するが,その書式は公式令の規定とはやや異なる。8世紀末の延暦年間にはすでに多くの国司が作成しなくなっていたらしい。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報