行渡(読み)ゆきわたる

精選版 日本国語大辞典 「行渡」の意味・読み・例文・類語

ゆき‐わた・る【行渡】

〘自ラ五(四)〙
① 行って渡る。渡って行く。
万葉(8C後)一三・三三三九「あしひきの 野行き山行き にはたづみ 川徃渉(ゆきわたり)
② おとずれる。訪問する。行く。
※続古今(1265)哀傷・一四六九・詞書「藤原保昌朝臣身まかりて後、かの八条の家にゆきわたりて心細く聞えければ」
③ 隅々にまで広がり及ぶ。残る所がなく行き届く。いきわたる。〔羅葡日辞書(1595)〕
※鮫(1963)〈真継伸彦〉二「粥がひとわたりゆきわたったとき」
④ 世間に流布する。普及する。
※浮世草子・元祿大平記(1702)五「はや唐本にて大かた所々えゆきわたりし時に、和板になりしゆへかねておもひの外売遠くなり侍る」
※銀の匙(1913‐15)〈中勘助〉前「まだ今のやうに琴といふもののゆきわたらないじぶんのこと」
⑤ 世間の事情に通じる。物事がよくわかる。注意などが行き届く。いきわたる。
※歌舞伎・勝相撲浮名花触(1810)序幕「殊に、あなたは行渡(ユキワタ)ったお生れ、御身上はよし、立派なお武家様ゆゑ」

いき‐わた・る【行渡】

〘自ラ五(四)〙
① 世の中の事情に精通する。あることの通である。いきとどく。ゆきわたる。
洒落本・嘉和美多里(1801)「平目とみせて鮫だの、玉子焼へは豆腐を入れるのと、〈略〉ナント世界には行(イキ)わたったもんだろう」
② すみずみまでとどく。すべてのところに達する。皆が所有するようになる。
古今集遠鏡(1793)一「御慈悲が、日本の外までいきわたって」

ゆき‐わたり【行渡】

〘名〙 万事に心を配ること。隅々にまでよく行き届くこと。いきわたり。
※合巻・蝶双春花壇(1834)上「御苦労致されましただけ、行渡りのよいお人で厶ります」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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