デジタル大辞泉
「身上」の意味・読み・例文・類語
しん‐しょう〔‐シヤウ〕【身上】
1 身の上。一身上のこと。しんじょう。
2 財産。資産。身代。また、家の経済状態。暮らし向き。「身上をこしらえる」「身上をつぶす」
3 給金。芝居関係者の間で用いられた語。
「身分だの―だのは…売出しの花形には及ばないまでも」〈万太郎・春泥〉
4 「しんじょう(身上)2」に同じ。
「成るほど此話しを聞かして下さらぬが旦那様の―で」〈一葉・この子〉
5 身分。地位。家柄。
「足軽大将から下の―の人のなさるべき儀なり」〈甲陽軍鑑・四〇〉
6 身の上に降りかかる災い。一大事。
「羽織へ染でもつけてみろ、―だあ」〈滑・七偏人・二〉
[類語](2)財産・財・産・資産・資財・財貨・貨財・私産・私財・家産・家財・富・身代・恒産
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
しん‐しょう ‥シャウ【身上】
〘名〙 (「しょう」は「上」の漢音)
※
田氏家集(889‐898頃)上・春日野寺道心「此外更無
二身上事
一」
※こんてむつすむん地(1610)三「しんしゃうのなげきをしっかい御身にまかせ奉らぬものは、あやうからずといふ事なし」
② 一身に災いのふりかかるさま。一生の一大事。
※
滑稽本・岡釣話(1819)「ありやを落したへ、とんだしんしゃうをしたの」
③ 身分。地位。身代。
※寸鉄録(1606)「ちいんのぎりなりとおもひて、かたはなをもちて、そのもののしんしゃうもわれも、はつるをけっこうとをもふつれぞ、これを『非義ノ義』といふなり」
④ 生活するための経済状態。暮らし向き。また、財産・資産。しんしょ。身代。
※申楽談儀(1430)
神事奉仕の事「神事を本にして、その間の身しゃう助からんための、上下なり」
※
洒落本・風俗八色談(1756)一「田作鱠に赤鰯の焼物は、身上
(シンシャウ)に相応の祝ひと」
⑤ (「身上にありつく」「身上をかせぐ」などと用い) 生活を安定させたり、財産を得たりするための手段・方法。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)三「今は昔、浮世房が止まりける御大名の
家中へ身上
(シンシャウ)を稼ぐ者あり」
※浮世草子・西鶴織留(1694)二「身上(シンシャウ)爰に極めて一日暮しに年をかさね」
⑥ 給金。芝居者の間に用いられる語。
※南水漫遊拾遺(1820頃)四「楽家通言〈略〉しんしゃう 給金の事」
⑦ 心の中。
※
歌謡・粋の懐(1862)六・緒「
芸妓(げいしゃ)幇間の腹袋
(シンシャウ)を見透すこと、
ギヤマンの
燗瓶(かんびん)よりも鮮かなるべし」
⑧ 本来のねうち。本領。しんしょ。しんじょう。
※この子(1896)〈
樋口一葉〉「成るほど此話しを聞かして下さらぬが旦那様の価値
(シンショウ)で」
しん‐じょう ‥ジャウ【身上】
〘名〙
① 体の表面。
※太平記(14C後)一二「山城国笠置と云ふ
深山に一の厳屋を卜め、落葉を攅
(あつ)めて身上の衣と為し、菓
(このみ)を拾うて口食と為して」
※車屋本謡曲・蝉丸(1430頃)「髪は身上よりおひのぼって星霜を戴(いただ)く」 〔白居易‐新楽府・売炭翁〕
② 一身にかかわること。みのうえ。しんしょう。
※
経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉前「諸有志者の身上に不測の大難を堕せしめんとは」 〔南史‐庾仲文伝〕
③ 財産。身代。しんしょう。
※落語・
お若伊之助(1897)〈三代目春風亭柳枝〉「何万円と身上
(シンジャウ)を持って居ながら洒落た遊びをなさると云ふ」
④ 本来のねうち。最大の取り柄。本領。しんしょう。
※
吾輩は猫である(1905‐06)〈
夏目漱石〉一〇「
長火鉢は拭き込んでてらてら光る所が身上なのだが」
⑤ 給金。芝居者の間に用いられる語。しんしょう。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕
⑥ (感動詞的に用いる) うまくいったこと。
※滑稽本・
浮世床(1813‐23)初「『二百下
(さが)る』『身上身上
(シンジャウシンジャウ)』」
[補注]②③④の用法については「しんしょう(身上)」と重なり、
清濁の区別は判然としないが、
現代では、特に②は多く「しんじょう」という。
み‐の‐うえ ‥うへ【身上】
〘名〙
① 自分の一身にかかわること。
我が身のこと。また、自分の
境遇。しんじょう。
※万葉(8C後)五・八九七「老いにてある 我が身上(みのうへ)に 病をと 加へてあれば」
※仮名草子・竹斎(1621‐23)下「いや何事も身のうへに覚えの無きと申けり」
② 一生の運命。一身上の大事。
※説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)下「此やう成ふるびたるおてらに、みやこのこくしの、やどふだを御うちありたは、ひじりの身の上とおぼしめし」
③ 世間の評判。面目。また、体面。江戸時代、役者の社会でいう。
※洒落本・仕懸文庫(1791)二「そんなことをいっておくんなせへすな、わっちが身のうへでござりやす〈身の上とは役者の通言〉」
しん‐しょ【身上】
〘名〙 (「しんしょう(身上)」の変化した語)
① 経済状態。暮らし向き。また、財産・資産。
※随筆・胆大小心録(1808)一一二「しん上ならずは江戸へことおしゃる、江戸はしんしょのさだめかや」
② 本来のねうち。もちまえ。
※当世花詞粋仙人(1832)「もちまへの事を、しんしょ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
普及版 字通
「身上」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典(旧版)内の身上の言及
【歌舞伎】より
…そのぜいたくな生活ぶりが,しばしば幕府の弾圧を受けている。役者の給金(身上(しんしよう))は,江戸時代には年給で定められ,最高額の基準を1000両としたことから〈[千両役者]〉の称も生まれた。実際には,千両を超す年給を得る役者もいた。…
※「身上」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」