蔚珍(読み)うるちん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「蔚珍」の意味・わかりやすい解説

蔚珍
うるちん / ウルチン

韓国(大韓民国)の東海岸(日本海側)に面した慶尚北道(けいしょうほくどう/キョンサンプクド)蔚珍郡(面積988.9平方キロメートル、人口5万9925、2000)の郡庁所在地。1979年、邑(ゆう)(町)に昇格した。面積130.2平方キロメートル、人口1万3099(2000)。太白(たいはく/テペク)山脈の東麓(とうろく)に位置し、西部山地で、東部の海岸側に平地がある。古くから地方行政の拠点であり、倭寇(わこう)の侵入を防ぐため城を築き軍を駐屯させた所である。付近には漁港の竹辺がある。

 蔚珍郡は高句麗(こうくり)時代には于珍也(うちんや)県といわれ、新羅(しらぎ)時代に至って蔚珍、1914年平海郡を併合して蔚珍郡となった。63年には江原道から慶尚北道に編入された。本郡の西半分は太白山脈の主峰が占め、白岩山(1004メートル)、通古山(1067メートル)、通吉山(1007メートル)など1000メートル以上の高山が多い。しかし東半分はしだいに低くなり、200メートル前後の丘陵地を形成、海岸に延びる。気候は比較的温和であるが、降水量は少ない。本郡は農業、水産業、林業が主産業で、鉱工業は振るわない。農耕地はおもに小河川下流部の谷間河口を中心に広がっている。主要作物は米、麦、ジャガイモなどである。蔚珍郡の海岸地方では厚浦、竹辺などの漁港を中心にサンマ、イカ、コンブなどが多くとれる。また西部の山地では木材、樹脂、薬草などの生産が盛んである。太白山脈の連峰や東海岸の景勝地などを擁していることもあって、観光名所に望洋亭、月松亭、石灰洞窟(どうくつ)である聖留窟、白巌(はくがん)温泉、徳邱(とくきゅう)温泉などがあり、古くから名が知られている。

[森 聖雨]

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