若は(読み)もしくは

精選版 日本国語大辞典 「若は」の意味・読み・例文・類語

もしく‐は【若は】

(副詞「もし」に、副詞語尾「く」助詞「は」の付いてできたもの。漢文訓読から生じた)
[1] 〘副〙 事柄が現実に生じたり存在したりする可能性があることを示す。もしかしたら。ひょっとして。
※続日本後紀‐嘉祥三年(850)三月一四日・宣命「若久波(もしクハ)御陵の内に犯し穢せる事もや在と巡察せしめむと為てなも」
[2] 〘接続〙 (「は」を仮定の「ば」と誤って「もしくば」とも) 前後の事柄のうち、どちらか一方が選択される関係、または、複数の事項が並立する関係にあることを示す。あるいは。または。もしは。
※明六雑誌‐二五号(1874)知説五〈西周〉「審弁体は過去の事に就て論斥若くは弁解を述る者とし」
[補注](1)「もしくは」と「もしは」はともに漢文の訓読から生じたが、その前後関係は、「もしは」を前とする説(春日政治「西大寺本金光明最勝王経古点の国語学的研究」)、「もしくは」を前とする説(山田孝雄「漢文の訓読によりて伝へられたる語法」)がある。
(2)「もしくは」と「または」は法令用語の上で次のように使い分けられている。同じ程度の選択的事柄が並列される場合には「または」を用い、「もしくは」を用いない。選択的事柄のうちで大小段階がある場合には、大きいものに「または」を、小さいものに「もしくは」を用いる。たとえば、「学校教育法‐二二条」にみえる「これを小学校又は盲学校聾学校若しくは養護学校の小学部に就学させる義務を負う」など。

もし‐は【若は】

〘接続〙 (副詞「もし」に助詞「は」の付いてできたもの。漢文の訓読から生じた)
① (主に「もしは…、もしは…」の形で) 同類の事柄を列挙し、それぞれの場合があることを示す。あるいは。または。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一「若有らむひとは是の経を聞き、能く他の為に演べ説き、若は心に随喜をも生じ、或は供養を設けよ」
② (「…もしは…」の形で) 同類の事柄のうち、いずれか一方が選ばれることを示す。それとも。あるいは。もしくは。そうでなければ。
蜻蛉(974頃)上「例の人は、案内する便り、もしはなま女などして、言はすることこそあれ」
[補注]→「もしくは(若━)」の補注

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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