盲学校(読み)もうがっこう

精選版 日本国語大辞典 「盲学校」の意味・読み・例文・類語

もう‐がっこう マウガクカウ【盲学校】

〘名〙 視覚障害のある児童生徒に対して、幼稚園小学校中学校または高等学校に準ずる教育を行ない、あわせてその障害を補うために必要な知識・技能を授ける学校
田楽豆腐(1912)〈森鴎外〉「盲学校(マウガクカウ)のある丘陵を一つ踰えれば」

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デジタル大辞泉 「盲学校」の意味・読み・例文・類語

もう‐がっこう〔マウガクカウ〕【盲学校】

視覚に障害のある児童・生徒に対し、幼稚園・小学校・中学校・高等学校に準ずる教育を行うとともに、その障害による困難を補うために必要な知識・技能を修得させる学校。学校教育法改正により、平成19年(2007)以降の法律上の区分は「特別支援学校」となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「盲学校」の意味・わかりやすい解説

盲学校 (もうがっこう)

盲児を対象とする学校で,この形態による組織的な教育はアユイValentin Haüy(1745-1822)が博愛協会の援助を得て1784年に設立したパリ盲学校を最初とする。ついで19世紀前半には欧米各国に盲学校の設立をみたが,その多くは民間の慈善事業として設立・維持され,貧窮盲人に対し生活扶助とともに宗教教育や凸文字の読み方,手仕事の訓練等を行う救済施設であった。19世紀後半に入ると各国の公教育の発展を背景に盲学校の教育的性格が強められ,1893年イギリス盲聾初等教育法,1905年のマサチューセッツ州をはじめとするアメリカ各州の教育法等によって盲・聾児の就学義務制,盲学校の公立化が進み,初期の収容寄宿制に加えて通学制盲学校や一般公立校内の盲・弱視学級も出現した。またフランスの盲人ブライユの考案した点字がこの期に各国に普及し,盲教育の内容・方法に画期的進歩をもたらした。欧米に後れて近代化を開始した日本でも,文明開化の波の中から1878年小学校教師古河太四郎らによる京都盲啞院(現,京都府立盲学校)が誕生,80年には開明官僚,啓蒙家らにより欧米にならった楽善会訓盲院(東京。現,筑波大学付属盲学校)が発足した。さらに20世紀初頭になって盲人の生活問題解決のため,はり(鍼)・あんま(按摩)の教育を主とする小規模な私立盲学校が全国的に多数設立された。これらの盲学校が義務教育制度の中に位置づけられたのは,ようやく第2次大戦後の学制改革(1947年学校教育法)によってである。

 現行制度の盲学校は盲者および強度の弱視者(両眼矯正視力0.1未満,その他点字を必要とする者)を対象とし,幼稚部と小・中学部(6・3制の義務教育)および高等部(本科3年,それに続く専攻科1~3年)からなる。1996年現在の盲学校数は71校(国立1,公立68,私立2),在学者数は4442人を数える。その教育課程は一般の小・中・高校に準ずる教科・領域と,特別の養護・訓練(点字指導・感覚訓練・歩行訓練など)からなり,職業課程としては伝統的な理療科(マッサージ・鍼・灸)を主とし,理学療法・音楽・ピアノ調律等がある。1960年代以降の国民の教育・福祉要求の多様化,失明の原因・発生率の変化を反映して,日本の盲学校の性格は大きく変わりつつある。すなわち,視覚障害幼児に対する早期教育の普及,弱視教育の比重の増大,小・中学部から高等部にまで及ぶ重度・重複障害学級の設置,理療科教育の内容の高度化と理療専門学校・短期大学の設置構想,盲学校卒業生の一般大学への進学増加などである。さらに障害者の社会的参加をめざす国際的動向をうけて,日本でも盲学校と一般校との交流教育がすすめられ,一般小・中・高校での盲児の統合教育も論議の焦点となっている。社会に開かれた視覚障害教育において盲学校の果たすべき専門的役割が問われることになろう。
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百科事典マイペディア 「盲学校」の意味・わかりやすい解説

盲学校【もうがっこう】

盲児や強度の弱視者に対し,幼稚園,小・中・高等学校に準ずる教育と,盲者に必要な知識・技能を授けることを目的とする学校。盲児の学習は点字や聴覚的教材・教具による。1784年パリに設立されたのが最初。日本では1878年古川太四郎が設立した京都盲唖(もうあ)院に始まる。1909年東京盲学校の設立以後,盲児と聾(ろう)児の教育は分離。1947年学校教育法により小・中学段階は義務制。2007年学校教育法の改正により,盲学校・聾学校・養護学校は障害種別を超えた特別支援学校となった。→障害児教育
→関連項目学校盲人養護学校聾学校

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「盲学校」の解説

盲学校
もうがっこう

盲人や強度の弱視者に必要な知識・技能教育を行う学校。日本では1878年(明治11)に古河太四郎らによって始められた京都盲唖院が最初。1923年(大正12)の盲学校及聾唖学校令により,道府県の学校設置義務を定めた。第2次大戦後の48年(昭和23)に就学義務制となり,法的基盤が確立された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「盲学校」の意味・わかりやすい解説

盲学校
もうがっこう

特別支援学校」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の盲学校の言及

【障害者教育】より

…その意味で障害児教育は通常の教育と無関係な特殊なものではなく,普通教育の一環として位置づけられる教育である。
[教育機関]
 盲学校聾学校養護学校のほか,障害児学級(学校教育法上は特殊学級)がある。養護学校には肢体不自由,病弱,精神遅滞の3種類にそれぞれ対応したものがある。…

※「盲学校」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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