福岡[県](読み)ふくおか

百科事典マイペディア 「福岡[県]」の意味・わかりやすい解説

福岡[県]【ふくおか】

九州地方北部の県。関門海峡を隔てて山口県に相対する。県庁所在地は福岡市。4986.40km2。507万1968人(2010)。〔沿革〕 かつての筑前国筑後国2国と豊前(ぶぜん)国北半を占め,古来大陸文化流入の門戸をなし,日本で最も早く水田農業が発達した地域である。《魏志倭人伝》中の諸国のうち県内に比定されるものもあり,3世紀にはすでに中国と交流があった。律令時代に設置された大宰府(だざいふ)は九州一円の政治・文化の中心となり,外港の博多繁栄中世には九州探題が九州全域を支配し,また文永弘安の役があった。豊臣秀吉の九州統一後小早川氏,立花氏らが分封,江戸期には福岡藩黒田氏が支配した。1871年諸藩を廃して8県が置かれ,1876年一部を大分県に分けて現県域となる。〔自然〕 中国山地の延長にあたる筑紫(つくし)山地が広く分布し,断層により平均標高400〜800mのいくつかの地塊や地塁に分かれている。北西海岸には第三紀以後の玄武岩地形,東部には開析溶岩台地が広がる。低地は洪積台地沖積低地で,遠賀(おんが)川流域の直方(のおがた)平野,博多湾に臨む福岡平野,筑後川流域の九州最大の筑紫平野などがあり,有明海沿岸には広い干拓地がある。玄界灘と響灘の沿岸には大島,志賀島能古島などの小島や,海ノ中道,糸島半島などがあり変化に富むが,周防(すおう)灘沿岸は単調。一般に温暖で,雨量は内陸部に多く大部分が梅雨期と台風時に集中。積雪はまれである。〔産業〕 産業別人口構成は第1次3.5%,第2次21.6%,第3次73.0%(2005)で,第3次比は全国上位。農業の比重は年々低下している。南部の筑紫平野では米麦作が主体であるが,比重は低下傾向にあり,代わって畜産や野菜,果樹,花卉(かき)などの栽培・加工が比重を高め,都市近郊型農業への転換が進む。品目別では小麦,ナス,イチゴ,カキ,キウイフルーツなどが全国上位の生産量がある。南部の八女(やめ)地方は高級茶の産地として知られる。かつて水産業は全国有数の生産高をあげていたが,1986年―2003年の17年間で約8割の減少を記録するなど,厳しい状況に直面している。200カイリ漁業水域の定着は沿岸漁業の重要度を高め,栽培・養殖漁業への転換を促進している。2003年の漁獲量約4.6万tは全国24位,博多港の水揚は全国22位にある。有明海沿岸を中心にノリ養殖の生産量は全国3位にある。鉱業では筑豊炭田三池炭田などの諸炭田があり,産炭量は1962年まで全国の首位を占め北九州工業地帯の形成に貢献したが,石炭産業の不振により大部分の炭鉱が閉山し,1997年最後まで残った大牟田市の三池鉱も閉山した。県北部には石灰石が豊富。工業は鉄と石炭に象徴される北九州工業地帯における素材型産業の地盤沈下が顕著。代わって苅田(かんだ)町や宮田町(現・宮若市)の自動車に代表される輸送機器の台頭が目立つが,先端技術産業を含む電気機器の伸びが全国平均を大きく下回り,現在置かれた厳しい状況を端的に示す。伝統工業である福岡の博多織,久留米久留米絣(がすり),大川の家具などは有名。大宰府跡,太宰府天満宮,宗像(むなかた)神社,宮地岳神社,元寇防塁跡,王塚古墳などの文化遺産,博多山笠,どんたく,小倉の祇園太鼓などの祭,瀬戸内海国立公園に属する関門海峡,玄海・耶馬日田英彦山両国定公園の多くの景勝地,商人の町博多,町並みの美しい柳川など観光資源に富む。〔交通〕 九州の門戸にあたるため鹿児島・筑豊・日豊・久大4本線,山陽・九州新幹線,国道3・10号線,九州・大分・東九州各自動車道をはじめ交通網が縦横に発達,福岡市を中心に西鉄各線が通じ,福岡市に福岡空港,北九州市に2006年3月,新たに開港した北九州空港がある。北九州港は重要港湾に指定されている。
→関連項目九州地方

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