禍を転じて福となす(読み)わざわいをてんじてふくとなす

精選版 日本国語大辞典 「禍を転じて福となす」の意味・読み・例文・類語

わざわい【禍】 を 転(てん)じて=福(ふく)[=幸(さいわい)]となす

わざわいを、うまく変えて、しあわせになるように取り計らう。
※日蓮遺文‐経王殿御返事(1273)「経王御前にはわざはひも転じて幸となるべし」 〔戦国策‐燕策・昭王

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故事成語を知る辞典 「禍を転じて福となす」の解説

禍を転じて福となす

災難や不幸を逆に利用して、いい結果に結びつけること。

[使用例] かの戦争の如き、その最中には実に修羅がいなれども、事、平和に帰すれば禍をまぬかるるのみならず、あるいは禍を転じて福となしたるの例も少なからず[福沢諭吉*政事と教育と分離すべし|1884]

[使用例] 必要は発明の母と云い、禍を転じて福となす、災害にこりる、こりるということは大切なことだ[坂口安吾*ヤミ論語|1948]

[由来] 「史記しん伝」に出て来る、弁論家蘇秦のことば。紀元前四世紀、中国の戦国時代せいという国が、隣国えんに攻め込んで領地を奪ったときのこと。蘇秦は、燕王に頼まれ、領地の返還を交渉しに斉に赴きました。彼は斉王に会うと、まず、燕の太子夫人が、強大なしん国の王の娘であることを指摘して、「今に秦が攻め込んで来ますよ」と脅かします。その上で、「昔から『禍を転じて福とす』ということばがあります。奪った領地を返してやれば、燕だけでなく、秦も喜びますよ」と述べました。そして、「この両国が斉になびけば、王の威信はますます高まることでしょう」と説得すると、斉王はこの策に従ったということです。

[解説] ❶蘇秦は、弁論術だけで戦国時代の各国を巧みに渡り歩いた人物。一時は、同時に六つの国の宰相を兼ねていたとも言われています。ここでも、まず怖がらせておいてから説得に取りかかり、最後は王の自尊心をくすぐるあたりに、彼の弁論術の真骨頂が発揮されていると言えるでしょう。❷なりゆきに任せていい結果になるのではなく、頭をはたらかせていい結果を積極的につかみにいく場合に使われます。

〔異形〕禍を転じて幸いとなす。

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