社会的養護(読み)しゃかいてきようご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会的養護」の意味・わかりやすい解説

社会的養護
しゃかいてきようご

家庭にかわり、社会が子供養育すること。おもに保護者のない児童、保護者に監護させることが適当でない被虐待児などを対象とし、公的な責任のもとに養育し保護するとともに、養育に困難を抱える家庭を支援する。社会的養護は、家庭養護と施設養護に大別できる。家庭養護とは、里親、ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)をさす。施設養護は、以下のような福祉施設への入所前提とする。(1)乳児院、(2)児童養護施設、(3)情緒障害児短期治療施設、(4)児童自立支援施設、(5)母子生活支援施設、(6)自立援助ホーム、(7)児童家庭支援センター。

 一般的にアメリカやヨーロッパでは家庭養護が主流であるが、日本では、家庭養護が養子縁組に等しく認識されてきた経緯があり、施設養護が圧倒的に多い。その一方で、障害や被虐待経験をもつ児童が増加していることから、家庭的な環境や個別的な関係が、養護において重要視されてきている。そのため、家庭における養育を委託する里親、養育者の住居で少人数の児童を養育するファミリーホーム、乳児院や児童養護施設への分園設置など、小規模グループケアの行える施設や体制が増加している。家庭養護を重視してきた海外の状況と比較すると、日本は集団養育を主体とするため、家庭的環境やプライバシーの不足、施設内でのいじめなど、さまざまな問題が指摘されている。また、日本の社会的養護は原則18歳までの仕組みになっていることから、高等教育機関への進学をあきらめざるを得ない場合が多く、支援不足も大きな問題である。

 2015年(平成27)3月の厚生労働省の発表によれば、対象となる児童は全国でおよそ4万6000人。(1)里親は登録里親数9441世帯、委託里親数は3560世帯、委託児童4636人。(2)ファミリーホーム223か所、委託児童993人。(3)乳児院133か所、入所乳幼児3022人。(4)児童養護施設601か所、入所児童2万8183人。(5)情緒障害児短期治療施設38か所、入所児童1314人。(6)児童自立支援施設58か所、入所児童1524人。(7)母子生活支援施設247か所、入所3542世帯、児童5843人。(8)自立援助ホーム118か所、入所440人。全国の児童相談所における児童虐待に関する相談件数は、児童虐待防止法施行(2000年)以前の1999年と2012年を比較すると約6倍に急増している。日本は先進国なかで、保護者と暮らせないために施設で生活する子供の割合が高い。国連などから改善を求められているものの、里親への委託が社会的に根づいていないことなどから、ほとんど変化はみられない。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例