硫化亜鉛(読み)リュウカアエン(英語表記)zinc sulfide

デジタル大辞泉 「硫化亜鉛」の意味・読み・例文・類語

りゅうか‐あえん〔リウクワ‐〕【硫化亜鉛】

亜鉛硫化物。白色の固体。天然にはせん亜鉛鉱として産する。白色顔料蛍光体などに使用。化学式ZnS

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精選版 日本国語大辞典 「硫化亜鉛」の意味・読み・例文・類語

りゅうか‐あえん リウクヮ‥【硫化亜鉛】

〘名〙 硫黄と亜鉛の化合物。化学式 ZnS 白色の結晶または粉末

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改訂新版 世界大百科事典 「硫化亜鉛」の意味・わかりやすい解説

硫化亜鉛 (りゅうかあえん)
zinc sulfide

化学式ZnS。2種の結晶形を有するが,それぞれ天然に産し,またその結晶構造を代表する名称となっている。転移点は1020℃で,低温形が立方晶セン亜鉛鉱型,高温形が六方晶ウルツ鉱型である。立方晶はセン亜鉛鉱として天然に産する。硫黄原子が六方最密パッキングをしているとみなされる。格子定数a=5.4093Å(26℃)。Zn,Sともに相手の原子が正四面体配位をしている。Zn-S原子間距離は2.36Å。白色,比重4.08,屈折率2.368。Zn2⁺水溶液に硫化水素を通ずると沈殿する。これを窒素気流中で650℃に加熱して得られる。六方晶はウルツ鉱として天然に産する。硫黄原子が立方最密パッキングをしているとみなされる。a=3.811Å,c=6.234Å。Zn,Sともに相手の原子が正四面体配位をしている。Zn-S原子間距離は2.36Å。白色,比重4.09,屈折率2.356,2.378。電子過剰の真正半導体で,エネルギー帯は368kJ/mol(3.81eV)である。紫外線(335nm以下),陰極線,X線,γ線照射により光を放出し,その波長は添加剤によって変化する。水に対する溶解度測定値はばらつきが大きいが,だいたい10⁻6~10⁻7g/100g(25℃)となっており,不溶性である。酸には溶ける。700℃以上で酸素と反応すると主としてZnO,SO3を生ずる。白色顔料としてきわめて広く利用される。胃液の酸に溶かされないので,とくに子ども用玩具の塗料に適している。CaS,ZnSeとつくる固溶体に銅,マンガン,銀などを添加したものは,多くの色調の蛍光性あるいはリン光性を示し,蛍光体としてテレビジョンのブラウン管や,蛍光塗料,リン光塗料に用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化亜鉛」の意味・わかりやすい解説

硫化亜鉛
りゅうかあえん
zinc sulfide

亜鉛の硫化物。天然には閃亜鉛鉱(せんあえんこう)として、またまれにウルツ鉱として産する。硫酸亜鉛水溶液に硫化アンモニウムを加えるか、酢酸酸性亜鉛塩水溶液に硫化水素を通ずると沈殿する。無色の粉末。結晶は2変態があり、低温型(β(ベータ)型)が閃亜鉛鉱型構造で、結合間隔Zn-S 2.35オングストローム、高温型(α(アルファ)型)がウルツ鉱型構造で、結合間隔Zn-S 2.36オングストローム。これらの間の転移温度は1020℃。水にほとんど不溶。新しくつくった沈殿は希無機酸によく溶けるが、古いものは溶けにくくなる。硫化水素を含む水で長時間処理するとコロイドとなって分散する。水を含んだ状態では空気中で徐々に酸化されて硫酸亜鉛を生ずるが、灼熱(しゃくねつ)乾燥すると空気中で安定。

 人工でつくったものは粒子が細かく白色顔料として用いられる。とくに硫酸バリウムと混ぜリトポンとしてペンキリノリウム、ゴムなどに広く用いられる。また硫化亜鉛に微量のラジウムを加えて広く蛍光体として用いられる。

[中原勝儼]

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化学辞典 第2版 「硫化亜鉛」の解説

硫化亜鉛
リュウカアエン
zinc sulfide

ZnS(97.47).天然には,せん亜鉛鉱として産出する.ウルツ鉱としてもまれに産出する.室温では,ウルツ鉱型構造よりもせん亜鉛鉱型構造のほうが安定である.転移温度1020 ℃.亜鉛と硫黄の直接結合または亜鉛塩水溶液に硫化アルカリを加えると得られる.酢酸イオンの存在下で酸性で硫化水素を通じても白色沈殿(無晶形)として得られる.新しい沈殿は希薄な強酸に溶けるが,放置すれば重合して不溶となる.せん亜鉛鉱型は密度4.08 g cm-3.ウルツ鉱型は密度4.09 g cm-3.水にほとんど不溶.空気中で赤熱するとZnOとZnSO4との混合物となり,空気の流通を十分にするとZnOだけが生じる.白色顔料リトポン(ZnSとBaSO4の混合物)の原料や蛍光体として蓄光顔料,夜光塗料,光触媒,殺真菌剤,X線蛍光画面,半導体レーザー結晶材料などに用いられる.[CAS 1314-98-3]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化亜鉛」の意味・わかりやすい解説

硫化亜鉛
りゅうかあえん
zinc sulfide

化学式 ZnS 。天然には閃亜鉛鉱として産出し,重要な亜鉛の資源鉱物となっている。純度の高い単結晶は無色透明で,粉末は白色ないし灰色,または黄色。水分を含むときは空気中で徐々に酸化され,硫酸亜鉛となる。 1180℃で昇華する。水,アルカリに不溶,鉱酸に可溶。白色顔料として,油布,リノリウム,皮革,歯科用ゴムなどに使用される。適当な不純物を添加した硫化亜鉛は紫外光を照射するとケイ光を発するので,古くからケイ光体として利用されている。発光色は不純物の種類によって変えることができる。電子ビームによっても発光するので,テレビなどのブラウン管のケイ光面に塗布されている。カラー用ブラウン管の青色は銀を,緑色は銅とアルミニウムをそれぞれ添加した硫化亜鉛の発光である (→II-VI族化合物半導体 ) 。また少量のラジウムあるいはトリウムを混ぜて夜光塗料 (時計用) としても使用される。

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百科事典マイペディア 「硫化亜鉛」の意味・わかりやすい解説

硫化亜鉛【りゅうかあえん】

化学式はZnS。白色無定形粉末または結晶。結晶には,α(ウルツ鉱型,比重4.06),β(セン亜鉛鉱型,比重4.102)の2型があり,1020℃以上の高温ではα型が安定。融点1850℃(150気圧),昇華点1185℃。水に難溶。新しくつくったものは酸に可溶。人工品は白色顔料(硫酸バリウムとの混合物はリトポン),蛍光体として使用。天然にはセン亜鉛鉱,ウルツ鉱として産する。

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