沈殿(読み)チンデン(英語表記)precipitation

翻訳|precipitation

デジタル大辞泉 「沈殿」の意味・読み・例文・類語

ちん‐でん【沈殿/沈×澱】

[名](スル)溶液中にまじっている微小固体が底に沈んでたまること。化学では、溶液中の化学反応で不溶性の生成物ができること。または、溶液中の溶質飽和に達して固まること。「川底へどろが―する」
[類語]沈没沈む没する沈める沈下沈降

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改訂新版 世界大百科事典 「沈殿」の意味・わかりやすい解説

沈殿 (ちんでん)
precipitation

一般には液体中の微小固体が液底に沈積すること。化学上は,溶液中で化学変化が起きて生じる生成物,または溶液が飽和に達することによって,その溶液中に溶解度以上に存在していた溶質が,細粒状または綿状,コロイド状の物質として現れる現象,また,このような変化を起こさせる操作,その際生じる固体状の物質(沈殿物precipitate)のことも沈殿という。沈殿をつくる目的は,物質の分離精製,分析をすることなどで,その操作は化学実験の最も重要なものの一つである。溶液中にいくつかの成分が共存する場合に,それらのなかから特定の成分を固相として分離する場合には,試薬(沈殿剤)を添加して難溶性の化合物としたり,溶液の濃縮などが行われる。生じた沈殿を分離するには,デカンテーションdecantation(容器を傾けて上澄液を流し出す),ろ過遠心分離などの方法が用いられる。溶液に目的成分以外のものを多量に含む場合や難溶性化合物を生ずる物質を共存する場合には沈殿に不純物共沈,吸蔵して含まれることがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「沈殿」の意味・わかりやすい解説

沈殿
ちんでん
precipitation

液体の中に存在している固体の粒子が液の底に沈積する現象。以前は「沈澱」と書いた。液底に沈積した固体は沈殿物、あるいは単に沈殿とよぶ。懸濁しているものまでを含めて沈殿ということもある。「澱」は「よどみ」とか「おり」という意味であり、植物の根や茎などを砕いて水に懸濁させ、繊維質を除いた液から沈殿した「おり」がデンプン澱粉)である。

 物質の分離や定量にはよく沈殿の生成が利用され、硫化水素法による沈殿の生成などは実に巧みな活用を行っている。重量分析のほとんどや容量分析の一部(沈殿滴定)、あるいは鏡検分析などに沈殿生成が利用されている。沈殿の生成には目的によって手法があるが、均一沈殿などもその一つである。

[山崎 昶]

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化学辞典 第2版 「沈殿」の解説

沈殿
チンデン
precipitation

液体中から固体が生成し,沈降し,底部に集まる現象.化学反応,温度変化,蒸発などの現象により,その温度での沈殿物の溶解度積に達した場合に起こる.沈殿操作は物質の分離,精製に利用され,化学分析,とくに重量分析や沈殿滴定に用いられる.さらに微量物質を多量の沈殿物と同時に沈殿させ,濃縮することはしばしば行われる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沈殿」の意味・わかりやすい解説

沈殿
ちんでん
precipitation

液体中にある細かい固体物質が下方に沈積すること。化学では,溶液中の化学変化によって生じる反応生成物が細粒状あるいは綿状の塊となって溶液中に現れる現象を沈殿という。沈殿を生成させる操作自体をさすこともある。沈殿生成法は物質の分離,精製,分析にしばしば用いられ,化学実験上重要な操作の1つである。沈殿現象のほか,沈殿物のことを略して沈殿ということもある。 (→沈降 )

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百科事典マイペディア 「沈殿」の意味・わかりやすい解説

沈殿【ちんでん】

一般には液体中の微小固体が下方に沈積すること。化学上は,溶液中の化学変化によって生じた生成物,または溶液が飽和に達することによってその溶解度以上に存在する溶質が,溶液中に細粒状,綿状の固体として現れる現象をいう。物質の分離・精製等に利用。またこの際現れる固体そのものも沈殿という。→共沈

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栄養・生化学辞典 「沈殿」の解説

沈殿

 (1) 液体の中で固体が生成し,下部に沈降すること.(2) →沈殿物

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